〔解説してくださるかた〕岡田浩一(おかだ・ひろかず)先生埼玉医科大学 腎臓内科教室 教授。1987年に慶應義塾大学医学部を卒業後、同大学医学部内科腎臓・内分泌・代謝科に入局。1993年米国ペンシルバニア大学内科腎・電解質部門に留学。1996年埼玉医科大学腎臓内科専任講師となり、2004年同助教授、2013年から現職。2020年から同大学病院副院長。専門は腎臓病学、血液浄化療法。日本腎臓学会監事。日本腎臓学会腎臓専門医。ゆっくり腎機能が落ち、心血管病のリスクが高まる
腎臓病には、腎機能が数時間から数日間のうちに急激に低下する急性腎障害と、ゆっくり進行していく慢性腎臓病(CKD)があります。
急性腎障害が場合によっては命にかかわるのに対し、慢性腎臓病は初期には自覚症状がなく、気づかないうちに悪化していきます。急性腎障害が慢性化するケースもあります。
CKDは、20代以上の8人に1人という高率で発症します。また、高血圧、糖尿病、脂質異常症やそれらに肥満が重なるメタボリック・シンドロームとの関連が深いのも特徴です(下図参照)。
生活習慣病やCKDは脳卒中や心筋梗塞、腎不全を招く
加齢もCKDの要因です。CKDが怖いのは、腎臓そのものが弱るだけでなく、心筋梗塞・心不全、脳卒中(脳梗塞と脳出血)のリスクが高まるためです。
なお、CKDは中等症程度に進行するまで貧血や息切れ、足のむくみといった症状は現れません。さらに進行すると、頭痛や足のけいれんなどの症状が出ます。
生活習慣病や糸球体腎炎などが放置されるとCKDになり、そのCKDが適切に治療されず、尿毒症(腎臓の働きが正常の場合の1割未満)に至ると人工透析か腎移植が必要になります。