天野惠子先生のすこやか女性外来 第4回(04) 日本の女性医療、性差医療の先駆者で、ご自身の更年期体験も山ほどお持ちの、天野惠子先生の連載「すこやか女性外来」。今回は、天野惠子先生が推薦する、全国・女性外来を紹介します。
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和歌山ろうさい病院 女性専用外来 辰田仁美先生
●前回の記事
脳と心臓の健康を保つカギは「血流」。更年期以降、動脈硬化を防ぐために注意したい3つのリスク信頼度が高い総合病院の“受診しやすい外来”
漢方で不調を治療。病気の早期発見も
辰田仁美先生(たつた・ひとみ)和歌山ろうさい病院呼吸器内科部長、働く女性健康研究センター長。和歌山県立医科大学医学部卒業、2001年より同院勤務。2003年より女性専用外来に携わる。専門は総合内科、呼吸器疾患、女性医療、漢方。日本内科学会指導医、日本呼吸器学会専門医、日本東洋医学会漢方専門医・代議員ほか。受診のハードルを低く。希望者の多い漢方治療
平成15年、「女性が受診しやすい外来を」と院内の女性医師で始めた女性専用外来。
当初は病気を早期発見し専門診療科へつなぐ目的の初診限定の外来でしたが、その後、漢方外来を開始。乳腺・肛門外科、産婦人科の医師も加わり、漢方薬による継続診療や手術後の定期検診などにも幅広く対応しています。
マンモグラフィの前で乳腺外科の内藤古真先生(右から2人目)と検査技師のかたがた。外来のスタッフ全員が女性だ。受診のハードルを徹底的に下げようと、一般外来とは別に女性専用外来直通の予約電話を設け、受け付けから診療、検査のすべてを女性が担当します。
開設時から中心的に携わっている漢方専門医の辰田仁美先生(呼吸器内科部長)は「更年期症状や検査で異常が出ない不調、メンタルの絡んだ体調不良などを抱え、漢方薬治療を希望されるかたも増えています。一方、ここで乳がんなどの病気が見つかることも多く、早期に専門的治療への橋渡しを行う役割も果たしています」と話します。
女性専用外来から各専門診療科への橋渡しがスムーズに行えるのも総合病院の強みだ。院内には研究センターも。総合病院の強みを生かす
院内には、加齢やホルモンの変調が女性の生活や就労の質に及ぼす影響を調べる「働く女性健康研究センター」があります。
辰田先生らの研究で、女性専用外来受診者の約6割にストレスが関与しており、加速度脈波から得られる自律神経バランスの測定値がストレスの増減とリンクすることがわかりました。
指先の加速度脈波から自律神経のバランスを測定しストレスを数値化。治療効果を客観的に表せる。辰田先生が診察時に携帯する漢方の医学書。「効果の見えにくい漢方薬治療も、ストレスの軽減を客観的数値で示せれば患者さんの励みになるのでは──。この研究は治療に生かせると考えています」
豊富な人的資源や研究設備に恵まれた総合病院の信頼度の高さと、“受診しやすさ”を兼ね備えた頼れる女性外来です。
取材・文/浅原須美 写真提供/和歌山ろうさい病院
『家庭画報』2022年9月号掲載。
この記事の情報は、掲載号の発売当時のものです。