〔解説してくださるかた〕植木浩二郎(うえき・こうじろう)先生国立国際医療研究センター研究所 糖尿病研究センター長、分子糖尿病医学研究部長。1987年東京大学医学部卒業。1989年東京大学医学部第三内科入局。1997年ハーバード大学ジョスリン糖尿病研究所研究員、2001年同講師を経て、2007年東京大学大学院医学系研究科糖尿病・代謝内科准教授、2014年同研究科分子糖尿病科学特任教授を歴任。2016年から現職。2020年から日本糖尿病学会理事長を務める。糖尿病の発症リスクは誰にでもある
糖尿病は血糖値が高い状態が続くことで全身に合併症を起こす病気です。血液中の糖を肝臓や筋肉、脂肪に取り込ませるホルモンであるインスリンの分泌の不足や取り込む作用の低下が原因となります。糖尿病にはいくつかタイプがあります。
1型糖尿病はインスリンを分泌する膵臓のランゲルハンス島に炎症が起こり、インスリンの分泌が不足します。これは自己を攻撃する自己免疫が原因です。
最も患者数が多いのが2型糖尿病で、インスリンが出にくい、インスリンが臓器で効きにくいという遺伝的素因に肥満(特に内臓肥満)や過食、運動不足、ストレスなどが重なって発症します。
植木浩二郎先生は「両親や祖父母、兄弟姉妹など血縁者が糖尿病ではないとしても、そのかたたちは肥満ではなく、糖尿病を誘発しない生活をしていたのかもしれません。糖尿病に関連する遺伝子は200以上ありますから、ほぼすべての人に一定の発症リスクがあると考えてもよいと思います」と話します。
ほかに妊娠期に起こる妊娠糖尿病、薬剤性の糖尿病などがあります。ここでは主に2型糖尿病について取り上げます。