専門医に聞く 今、気をつけたい病気 第9回(02) 糖尿病の発症リスクは年齢を重ねるにつれて上がります。全身に合併症を起こす糖尿病の検査や治療について、国立国際医療研究センター研究所 糖尿病研究センター長で、日本糖尿病学会理事長を務める植木浩二郎先生に伺います。
前回の記事はこちら>> 〔解説してくださるかた〕国立国際医療研究センター 研究所 糖尿病研究センター長、分子糖尿病医学研究部長
植木浩二郎(うえき・こうじろう)先生
●前回の記事
年齢とともに上がる「糖尿病」のリスク。やせ型女性も注意が必要な理由とは?自覚症状がないまま、重大な合併症を引き起こす
私たちがエネルギー源とする糖は消化を経て小腸で吸収され、血流に乗って主に肝臓や筋肉、脂肪に運ばれて貯蔵され、ほかの臓器にも運ばれます。
インスリンは血糖を臓器に取り込ませる唯一のホルモンです。糖尿病はこのインスリンの分泌量が少なかったり、臓器での効きが悪かったりすることで発症します(下図参照)。
インスリンと血糖、糖尿病の関係
血液中の糖は肝臓や筋肉、脂肪に取り込まれ、エネルギー源として使われたり、蓄えられたりする。この臓器への取り込みにはインスリンが必要。インスリンは膵臓のランゲルハンス島から分泌され、血液に乗って臓器に運ばれる。このときインスリンの分泌が少ない、あるいは臓器に血糖を取り込む働きが弱いと血液中の糖がだぶつく。これが糖尿病の発症や悪化の原因となる。糖尿病の初期には自覚症状はなく、進行すると、のどの渇き、夜間の頻尿や多尿、体重減少、突然の昏睡などの症状があらわれます。
糖尿病は全身に合併症を起こす
怖いのが合併症です(上図参照)。腎症、網膜症、神経障害は頻度が高く重大であるため、3大合併症と呼ばれます。
それぞれ成人の人工透析に至る原因の第1位、失明の原因の第2位、下肢切断の原因の第1位です。「認知症や多くのがんのリスクを高めることも知られています」。
糖尿病の診断は、血糖値、HbA1c(ヘモグロビンエーワンシー)の数値などが目安になり(下のコラム参照)、糖尿病やその合併症の症状の有無などを考慮して行われます。
糖尿病の診断基準
*下記が「糖尿病型」とされる数値。これらの数値や症状などから診断される
●血糖値
①空腹時血糖 126mg/dl以上、②随時血糖 200mg/dl以上、③75g経口ブドウ糖負荷試験(OGTT)2時間値 200mg/dl以上のいずれか
●HbA1c(ヘモグロビンエーワンシー) 6.5パーセント以上
糖尿病の検査
診断には血糖値やHbA1cの検査、経口ブドウ糖負荷試験(OGTT)が行われます。
血糖検査は、空腹時や随時(食事の有無を問わず医療機関に行ったとき)に行われます。「空腹時血糖検査で、今日は検査があるから食事を軽めにしたとおっしゃる患者さんが意外に多いのです。この場合の血糖値は診断や治療にあまり役に立ちません。特に中性脂肪値を調べたいときには、本当の“空腹時”の検査が必要です」。
HbA1c検査は血液中のヘモグロビンに糖が結合している割合を調べるもので、1~2か月の血糖の状態を反映するとされます。
OGTTは空腹で一定量のブドウ糖を飲み、数回採血して血糖値の上昇の程度、インスリン分泌の量やタイミングをみる検査です。