天野惠子先生のすこやか女性外来 第5回(03) 閉経後に訪れる数々の試練の中で、女性が男性の何倍も注意を要するのが骨量の減少。“骨折しないこと”は女性が将来、要介護を免れるための大事な条件です。「危機感をもって骨粗しょう症対策を」と天野先生がすべての女性に呼びかけます。
前回の記事はこちら>> 骨量維持は更年期女性の重要な“ミッション”
骨粗しょう症を予防し、“転んでも折れない骨”をつくる
●前回の記事
“女性であること”が骨粗しょう症のリスク!? 減少に早く気づくために正確な骨密度検査を受けましょう天野惠子(あまの・けいこ)先生静風荘病院特別顧問、日本性差医学・医療学会理事、NPO法人性差医療情報ネットワーク理事長。1942年生まれ。1967年東京大学医学部卒業。専門は循環器内科。東京大学講師、東京水産大学(現・東京海洋大学)教授を経て、2002年千葉県立東金病院副院長兼千葉県衛生研究所所長。2009年より静風荘病院にて女性外来を開始。骨は自分でつくるもの。重要なのは食事と運動
【食事】骨を育てる食事の基本は3食きちんと、バランスよく
骨粗しょう症は“生活習慣病”。つまり自分で予防することのできる疾患です。
骨をつくる材料になる栄養素はカルシウムですが、骨量を維持するにはそれだけでは不十分。
カルシウムを腸から吸収されやすくするビタミンD、カルシウムを骨につきやすくするビタミンK、そして骨の質を高め、骨を支える筋肉のもととなるたんぱく質も欠かせません。
しかし基本は、「3食きちんと、バランスよく」。もちろん肥満予防のために食べすぎにはくれぐれも注意を。
●骨量維持のために重要な栄養素
カルシウム骨をつくる材料になる
(牛乳・乳製品、小魚、緑黄色野菜、大豆・大豆製品)
ビタミンD腸からのカルシウム吸収を助ける
(魚、きのこ)
ビタミンK骨へのカルシウム沈着をうながす
(納豆、緑黄色野菜、卵)
たんぱく質骨の質を高めるコラーゲンの材料となる
(肉、魚、卵、大豆・大豆製品、牛乳・乳製品)
●摂りすぎに注意したい食品
リン(食品添加物など)、カフェイン、アルコール→カルシウムの吸収を妨げる
食塩→カルシウムの尿への排せつをうながす
「やせ」の人は骨量も少ない傾向に。適正体重の維持を
体重の重い人は歩くだけで骨にかかる負荷が大きいので、骨量は多い傾向にあります。一般にやせていることは骨粗しょう症のリスクとなります。一方、肥満は変形性膝関節症などの要因になるので適正体重の維持が大事です。「日本人の食事摂取基準(2020年版)」では50〜69歳の目標とするBMIの範囲を20.0〜24.9と定めています。
荷物を背負って歩けば骨への負荷がより高まり、戸外で日光を浴びれば皮膚でビタミンDがつくられる。【運動】日光を浴びて、負荷のかかる運動を日課に。
筋肉も同時に増やそう
骨に衝撃を与えると骨芽細胞が活性化します。
骨密度を上げるにはかかと落としやジャンプなど骨に負荷をかける運動が適しています。
また日光を浴びると皮膚でビタミンDが生成されるので、戸外での運動はさらに効果的。運動によって筋力も鍛えられ、バランス力の強化や転倒防止効果も期待できます。
自分に合った無理のない運動を長く続けましょう。
●運動によって骨密度が上がった例
・
歩行や
太極拳など軽い荷重運動で
腰椎骨密度が上昇。
ジョギング、ダンス、ジャンプなど強い荷重運動で
大腿骨近位部骨密度が上昇。両者を組み合わせた運動で両方の部位の骨密度が上昇した。
・骨粗鬆症患者(平均年齢65歳)が
1日8000歩のウォーキングを週3日以上、1年続けたところ、
腰椎骨密度が1.71パーセント上昇した。
「骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン2015年版」より
*NPO法人性差医療情報ネットワーク「女性外来マップ」では、女性外来を開設している医療機関(2018年現在約300か所)のリストを公開。
URL:
http://www.nahw.or.jp/hospital-info*「女性外来オンライン」(天野惠子先生主宰)では、天野先生ご自身が厳選した女性の健康の回復や維持に役立つ信頼性の高い情報を発信しています。
公式サイト「女性外来オンライン」:
https://joseigairai.online/YouTube
「女性外来オンラインチャンネル」はこちら>> イラスト/佐々木 公〈sunny side〉 取材・文/浅原須美
『家庭画報』2022年10月号掲載。
この記事の情報は、掲載号の発売当時のものです。