脳卒中や認知症のリスク発見と予防のために「脳ドック」
加齢とともにリスクが高まり、命と尊厳にかかわる重大な脳卒中と認知症。脳ドックの進歩とともに、その兆候をより詳細に調べられるようになりました。結果を生活習慣の改善と予防に生かすことにも、脳ドック受診の意味があります。
〔解説してくださるかた〕新百合ヶ丘総合病院院長 笹沼仁一先生
●前回の記事
「脳ドック」脳卒中に更年期との関係も受け方選び方
検査・説明・治療まで、一貫して対応できる脳神経専門のドックを。受診をきっかけに生活を見直そう
「脳ドックで最も重要なのは結果説明です」と笹沼先生はいいます。
すぐに治療が必要な重大な異常が見つかることは稀で、たいていは「異常なし」か、何らかの所見があっても「経過観察」で済むことが多いものです。しかし、報告書の書き方や担当医の説明の仕方次第では、受診者は必要以上に深刻に受け止めてしまい、過度に不安を強めさせることにもなりかねません。
受診者の心情に配慮した丁寧な説明をしてくれる医師との間には信頼関係が築かれ、ドックの結果を生かそうと前向きな思いも生まれます。
たとえば、くも膜下出血の要因となる未破裂動脈瘤が見つかった場合。「瘤が小さめで経過観察で十分と判断したとき、私は報告書に“膨瘤(ぼうりゅう)(ちょっとした膨らみ)の疑い”と書き、無用な心配を与えないようにします。7、8ミリ以上の大きさがあっても“未破裂動脈瘤の疑い”と書き、断定はしません。面談のときに画像を示して、相手の表情を見ながら丁寧に説明をします」(笹沼先生)。
内科のクリニックなどで人間ドックのオプションとして実施される脳ドックでは、疑わしいケースが見つかると別途、脳神経外科への受診が必要です。検査から結果説明、診断、治療まで一貫して責任を持って対応できるのは、脳神経外科・脳神経内科の実施する脳ドックだといえます(日本脳ドック学会のホームページでは認定施設を公開。2022年4月1日現在292施設※下記参照)。
特に異常がなくても3年に一度は検査を受けて、脳の健康維持のための生活改善に取り組みましょう。
上手な受け方・選び方
●知識と経験が豊富な脳の専門医が結果説明や治療まで対応するところが安心
●異常がなくても3年に1度は受診して早期発見につなげる
●結果説明をもとに生活習慣を見直し、脳卒中や認知症の予防に努める
一般社団法人日本脳ドック学会HPhttps://jbds.jp/日本脳ドック学会認定施設一覧はこちらからhttps://jbds.jp/centers/ 取材・文 浅原須美 撮影 田中 雅、柳原久子、本誌・大見謝星斗、伏見早織 イラスト 岡部哲郎
『家庭画報』2022年11月号掲載。
この記事の情報は、掲載号の発売当時のものです。