天野惠子先生のすこやか女性外来 第6回(02) 「私の血圧は低めだから大丈夫」と安心していられるのは閉経前まで。エストロゲンの庇護がなくなる更年期以降、女性の血圧は上昇しはじめます。覚えておきたいのは、加齢による血圧の上がり方が女性と男性では異なること。天野先生が性差医療をベースに、“女性のための”血圧の話をお届けします。
前回の記事はこちら>> 閉経後、徐々に上がりはじめる女性の血圧
「高血圧なんて関係ない」は大きな間違い。今から減塩を
天野惠子(あまの・けいこ)先生静風荘病院特別顧問、日本性差医学・医療学会理事、NPO法人性差医療情報ネットワーク理事長。1942年生まれ。1967年東京大学医学部卒業。専門は循環器内科。東京大学講師、東京水産大学(現・東京海洋大学)教授を経て、2002年千葉県立東金病院副院長兼千葉県衛生研究所所長。2009年より静風荘病院にて女性外来を開始。加齢とともに女性の血圧は大きく変わる
●女性の血圧の特徴
閉経前→更年期→更年期以降
女性の血圧は3段階で変化します
閉経前の血圧は、血管を拡張させるエストロゲンの作用によって低めに抑えられます。更年期(閉経前後の約10年間)はホルモンバランスが乱れて自律神経がうまく調節できず、血圧が乱高下することがあります。
しかし多くは一時的なもので心配は無用です。そして更年期以降、エストロゲンの減少とともに血圧は上昇し、男性との差がなくなっていきます。
●加齢に伴う収縮期血圧値の変化(男女比較)
千葉県22市町村基本健康診査(平成15~18年度。男女合わせて延べ36万6862人のデータ)の結果より平成18年度の数値を取り出してグラフ化。千葉県基本健康診査データ収集システム確立事業●高血圧と診断される値と降圧目標値〔75歳未満の場合(mmHg)〕「高血圧治療ガイドライン2019」(日本高血圧学会)による。家族の血圧は? 生活習慣は? “高血圧リスク”を知って血圧を測る習慣を
高血圧にはほかの疾患が原因で起きる二次性高血圧と、体質や生活習慣などが要因の本態性高血圧があり、後者が全体の9割を占めます。
下のセルフチェックで高血圧のリスク度を確認し、当てはまる人は日常的に血圧を測る習慣をつけましょう。
病院で測る血圧は家で測る血圧より高めに出ることが多く、医学的には家庭血圧の値が重要視されます。
家庭用血圧計は、指先や手首で測るタイプよりも正確な値が出る上腕型がおすすめ。ウェアラブル血圧計も高精度で小型のものへと進化している。【高血圧のリスク度セルフチェック】
・家族に高血圧の人がいる
・妊娠中、血圧が高かった(妊娠中毒症または妊娠高血圧症候群と診断された)
・閉経を迎えた
・BMI値が23以上である。BMI=体重(キロメートル)÷身長(メートル)
2・味つけの濃いもの(塩分が高めのもの)が好きだ
・食事を1日3回、規則正しく摂らない日が多い(回数が少ない、時間が不規則だ)
・運動をまったくしていない
・睡眠不足である
・(シフト勤務などで)昼夜逆転の生活をしている
・仕事や家庭においてストレスが多いと感じている
・毎日飲酒している
・喫煙している
※当てはまる項目が多いほど高血圧のリスクも高くなります。チェック項目が多かった人は生活習慣の見直しが必要です。生活改善に取り組みましょう。
参考文献『薬なしでも女性の血圧は下げられる!』天野惠子著(PHP研究所)
*NPO法人性差医療情報ネットワーク「女性外来マップ」では、女性外来を開設している医療機関(2018年現在約300か所)のリストを公開。
URL:
http://www.nahw.or.jp/hospital-info*「女性外来オンライン」(天野惠子先生主宰)では、天野先生ご自身が厳選した女性の健康の回復や維持に役立つ信頼性の高い情報を発信しています。
公式サイト「女性外来オンライン」:
https://joseigairai.online/YouTube
「女性外来オンラインチャンネル」はこちら>> 撮影/鍋島徳恭 イラスト/佐々木 公〈sunny side〉 取材・文/浅原須美
『家庭画報』2022年11月号掲載。
この記事の情報は、掲載号の発売当時のものです。