天野惠子先生のすこやか女性外来 第6回(03) 「私の血圧は低めだから大丈夫」と安心していられるのは閉経前まで。エストロゲンの庇護がなくなる更年期以降、女性の血圧は上昇しはじめます。覚えておきたいのは、加齢による血圧の上がり方が女性と男性では異なること。天野先生が性差医療をベースに、“女性のための”血圧の話をお届けします。
前回の記事はこちら>> 閉経後、徐々に上がりはじめる女性の血圧
「高血圧なんて関係ない」は大きな間違い。今から減塩を
天野惠子(あまの・けいこ)先生静風荘病院特別顧問、日本性差医学・医療学会理事、NPO法人性差医療情報ネットワーク理事長。1942年生まれ。1967年東京大学医学部卒業。専門は循環器内科。東京大学講師、東京水産大学(現・東京海洋大学)教授を経て、2002年千葉県立東金病院副院長兼千葉県衛生研究所所長。2009年より静風荘病院にて女性外来を開始。血圧を下げるポイントは、1に減塩、2に減塩
●高血圧対処法7か条
(1)減塩
体内の塩分が増えると塩分濃度を薄めるために水分が蓄積され、血流量が増えて血圧が上がる。
◆対処法→食塩摂取量を1日6グラム未満に抑える
(2)適正体重の維持
肥満になると血流量が増えて血圧が上がりやすく、心臓にも負担をかける。
◆対処法→BMI23未満を目指す
(3)適度な運動
有酸素運動は心筋のポンプ力を高めて心拍数を減らし、血圧の上がりにくい体にする。
◆対処法→ウォーキングなどを1日30分行う
(4)ストレスの解消
ストレスは交感神経を優位にし、血圧を上昇させる。
◆対処法→休息や趣味の時間を持つなど自分なりのストレス発散法を心がける
(5)睡眠の量と質の確保
睡眠障害のある人は睡眠時に交感神経が活発に働き、血圧が上昇しやすい。
◆対処法→睡眠時間は1日6~7時間がベスト
(6)節酒
過度の飲酒や習慣的な飲酒は血圧上昇の要因になる。
◆対処法→女性は1日にビール250ml、日本酒0.5合まで(男性の許容量はその2倍)
(7)禁煙
ニコチンには血圧を上昇させる作用があり、たばこを1本吸うと約15分間血圧の上昇が続くとされる。
◆対処法→喫煙者は今すぐ実行。家族にも禁煙をすすめる
血圧上昇の原因はさまざま
塩分の摂りすぎ、運動不足、肥満や不眠やストレスも
塩分の摂りすぎを筆頭に肥満や運動不足、睡眠不足などが要因となる高血圧は、まさに生活習慣病。降圧薬を使うより生活を見直すのが先です。
なかでも効果的な対処法は減塩。まずは3か月、減塩生活を続けて血圧の変化をみてみましょう。
上に示した対処法は、高血圧と並ぶ「3大動脈硬化リスク」である脂質異常症や糖尿病の予防法とも共通です。
塩分摂取量の目安は「1日6グラム未満」
無理のない減塩法の工夫を
日本高血圧学会によると、塩分摂取量の目標は1日6グラム未満。1日1グラム減らすと平均1mmHg強の収縮期血圧の低下が期待できるといいます。
香辛料や酸味で味を補う、だしでコクを出す、めん類の汁を残すなど普段の食事の中で減塩を実践しましょう。加工食品や外食メニューの食塩含有量を確かめる習慣も減塩意識を高めることにつながります。