漢方の知恵と養生ですこやかに 第11回(02) シャツ1枚でも十分な暖かい日があるかと思えば、冬用コートの出番もやってくる11月。温度差の影響を受けて、ぎっくり腰や肩こり、首の痛みが生じやすい季節でもあります。予防と改善のために、体を内と外から“じわじわと”温めて汗をかくことを心がけましょう。
前回の記事はこちら>> 〔解説してくださるかた〕横浜薬科大学客員教授・薬学博士 漢方平和堂薬局店主 根本幸夫先生
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立冬を迎えたら要注意。寒暖差がもたらす筋肉の緊張が、肩こりやぎっくり腰に>>衣類と食べ物で体をじんわりと温めよう。汗をかくと筋肉が緩む
足湯、レッグウオーマー、湯たんぽで筋肉の緊張を防ぐ
寒暖差がもたらす筋肉の緊張への対処法は主に2つ。体を温めて温度差の影響を少なくすることと、汗をかいて筋肉を緩めることです。
たとえば就寝中に足がつることが多いのは、じっと動かずに眠っている間に足腰が冷えて寝返りをうったり足を動かした拍子に筋肉に緊張が走るためです。寝る前に足湯につかる、レッグウオーマーや腹巻きをして寝るなど体温の差を最小限にする工夫で防ぐことができます。
しかし、ぎっくり腰、腰痛、首の筋違えなど痛みのあるときの入浴は禁物です。体を温め、汗をかかせるときのコツは「急激にではなくじんわりと」。外から急速に温めると痛みのもとにある炎症を悪化させることになります。電気毛布や電気あんかより、湯たんぽのほうが温め方が緩やかで優しいので、筋肉の緊張をほぐすのに適しています。
また、寝ている間の口呼吸は喉を乾燥させて炎症を起こす大きな原因になります。首にタオルを巻いて体温が逃げるのを防ぎ、真ん中を濡らしたマスクをして寝る(鼻は出してよい)と、体が温まり喉が潤うので喉風邪の予防にとても効果的です。
筋違えやぎっくり腰にも漢方薬。温かい飲み物で効き目を増す
首の筋違えには葛根湯、急性期のぎっくり腰には麻黄湯(まおうとう)がよく効きます。麻杏薏甘湯(まきょうよくかんとう)はぎっくり腰の急性期にも慢性期にも使え、むくみにも効く非常に使いやすい漢方薬です。また、足のつりやこむらがえりには桂枝加朮附湯(けいしかじゅつぶとう)を処方します。
これらはいずれも体を温め、汗をかかせて筋肉の緊張を緩める作用を持つ薬です。したがって温かい湯で服用するのが原則。直後に薄いお粥かスープを飲み、首にタオルを巻いたり衣服を重ねて、体の内側と外側から温めることでより効き目が増します。