化粧品で肌は変わる 第5回(全11回) シワをなくしたい、ほうれい線を薄くしたい、昔の顔立ちを取り戻したい──。スキンケアにおける技術革新が加速度的に進む今、そうした願いが化粧品で叶うことも現実になってきています。果たして“若返り”は可能なのでしょうか。最先端テクノロジーを搭載したエイジングケア化粧品の最前線をお届けします。
前回の記事はこちら>> “最先端”の化粧品をもっと理解しませんか?
ジャーナリスト 麻生 綾さんの分析「値段に見合うだけの効果があるの?」「ほとんどが宣伝費であり容器代でしょう?」きっと誰もが一度は抱いたことのある、いわゆる“ラグジュアリーブランドの化粧品”についての疑念や疑問。一つずつお答えしていきたいと思います。
「化粧品なんて効かないでしょう?」いいえ。いまや技術も効果も医薬品並みの進化を遂げています。しかも効きの強さと引き換えに、もれなく副作用もはらむ薬と違って、化粧品は長く使い続けても基本的にリスクの少ない設計。
そういった意味で、現在の化粧品、そして化粧品づくりは、人生100年時代にどう寄り添っていくかを見越した、伴走者的存在といえるのではないでしょうか。
とりわけラグジュアリーブランドには、そんな効果と安全性を両立させた製品――洗練された超先端の技術を駆使した製品を開発する体力、経験、そして何より矜持があります。
肌に忍び寄る老化の兆しを迎撃し、守りを固め、ときには積極的に打って出る。いまどきの“最先端”コスメの頼り甲斐ときたら。成熟した市場には、もはや雰囲気だけが売りの化粧品など、ほとんど存在しないといっていいでしょう。
ただ、日本には薬機法という法律があり、メーカーは「シミが消える」「シワが消える」などの直接的な表現を使うことができません。きちんとした会社ほどそれを遵守しており、たとえどんなに自信があっても、控えめな伝え方になっているのが現状です。
「化粧品なんてほとんどが宣伝費と容器代でしょう?」確かにそんな面もあるでしょう。ただ、素晴らしい製品を開発したとしても、それが広く世に知られなければ存在しないのと一緒。ゆえに、ある程度の宣伝は必要です。
そして何より、“効果”を出すための処方やオリジナル成分などは、一朝一夕に生み出されるものではありません。完成に至るまでの長い年月に要する研究開発費、人件費などは先行投資であり、非常に高度な技術料。それはメティエ・ダール(職人技術)による宝飾や着物などと、ある意味同列ではないでしょうか。
一滴の美容液、一匙のクリームに凝縮された、莫大な時間と知恵と労力。そう、ラグジュアリーコスメはその美しい容れ物も含めて、綺麗を運ぶアート作品でもあるのです。
“ミクロ”の視点から“マクロ”の視点にこのように、昨今のラグジュアリーコスメはとてつもなく優秀なのです。効果しかりデザインも含めた物語性しかり。思うに、私がこの仕事に就いた30年前からここに至るまでの最大の変化は、肌に対する理解の深まり、すなわちよりサイエンティフィックにエイジングの原因究明ができるようになったことでしょうか。
そのせいか、いまやトレンドは単にシミやシワを消すといった場当たり的な“ミクロ”の視点から、肌全体の底上げをして力強く健康な肌を目指す“マクロ”の視点に移りつつあります。なぜならこの先、命と等しく肌の寿命も、人類未到の領域まで延ばしていかなければならないのですから。
毎朝晩、いちばん身近なところから私たちをエンパワーしてくれる確かな存在。それがいまどきの“最先端”コスメです。固定概念を捨て去り、知識を2023年にアップデートして。ともに肌も心も満たされた未来へと参りましょう。
麻生 綾/美容編集者・ビューティエッセイスト。女性誌の美容ページを30年以上担当し、美容誌『etRouge』で編集長を務めた美容のプロフェッショナル。フレグランスにも造詣が深い。 『家庭画報』2022年12月号掲載。
この記事の情報は、掲載号の発売当時のものです。