親と自分のために──知っておきたい認知症介護の話 第12回 認知症に向き合うには事前の備えが大切です。介護する側とされる側、お互いが幸せに過ごすために、さまざまな分野の専門家から具体的なアドバイスを伺います。
前回の記事はこちら>> 〔今月の専門家〕社会福祉士・介護支援専門員 岩澤 純(いわさわ・じゅん)さん特別養護老人ホームの介護職を経て在宅介護支援センターのソーシャルワーカー、介護支援専門員(ケアマネジャー)に。25年以上にわたり、さまざまな在宅介護サービスや介護施設の運営に携わる。元公益社団法人長野県社会福祉士会理事、社会福祉学修士。社会福祉協議会が実施する「日常生活自立支援事業」を早めに利用するのがよいでしょう
認知症が進行し、理解力や判断力が低下してくると日常的な金銭管理や行政の手続きなどもできなくなってきます。家族と同居していない場合、あるいは老々介護の高齢者世帯では、たちまち生活に支障をきたします。とはいえ、離れて暮らす家族が日常的に支えることはできないため、困っている人は少なくないでしょう。
「こんなときに対応してくれるのが、社会福祉協議会が実施している日常生活自立支援事業です」と福祉系サービスに詳しい岩澤 純さんはいいます。
この支援事業では、「生活支援員」と呼ばれる職員が日常的な金銭管理から福祉サービスや医療サービスを利用する際の手続き、住民票の届け出といった行政に関する手続き、預貯金通帳や印鑑の預かりまで、さまざまな対応を必要なタイミングでサポートしてくれます(下表)。
日常生活自立支援事業によるサポート
「ここが知りたい 日常生活自立支援事業 なるほど質問箱 平成21年3月改訂版」(全国社会福祉協議会)を参考に作成この支援を受けたいときは最寄りの社会福祉協議会の窓口に連絡すると、生活支援員が自宅に来てくれて、認知症の人から困っていることを聞き取ったうえで、サポートの内容について話し合います。そして、この話し合いに基づき、生活支援員が支援計画を作成してくれるので、利用者がその内容を承諾すれば社会福祉協議会との間で利用契約を結び、生活支援員によるサポートが開始されます。
利用の相談をしたり支援計画を作成してもらったりすることは無料ですが、サポートを受ける際には利用料がかかります。社会福祉協議会によって金額は異なり、厚生労働省によると訪問1回あたりの利用料の平均額は1200円です。