コレステロールも中性脂肪も必要な栄養素
女性の脂質異常症は、過剰に怖がらなくて大丈夫
天野惠子(あまの・けいこ)先生静風荘病院特別顧問、日本性差医学・医療学会理事、NPO法人性差医療情報ネットワーク理事長。1942年生まれ。1967年東京大学医学部卒業。専門は循環器内科。東京大学講師、東京水産大学(現・東京海洋大学)教授を経て、2002年千葉県立東金病院副院長兼千葉県衛生研究所所長。2009年より静風荘病院にて女性外来を開始。コレステロールが増えるのは加齢に伴う“当たり前”
「コレステロール値が高くても、女性は心筋梗塞や狭心症の発症リスクが上がりません」── 天野惠子先生
女性はエストロゲンの分泌がなくなる更年期以降、血圧や血糖値などいろいろな数値が上がり始めます。
なかでも顕著で性差が大きいのが脂質の一種であるコレステロール。下の棒グラフが示すように、女性の総コレステロール値は50歳以降、男性を追い越し、高値が続きます。
女性は50~60代でピークを迎え男性を追い越す
加齢に伴う総コレステロール値の変化(男女比較)
千葉県22市町村基本健康診査(平成15~18年度。男女合わせて延べ36万6862人のデータ)の結果より平成18年度の数値を取り出してグラフ化(千葉県基本健康診査データ収集システム確立事業)。まず、それは加齢に伴って女性の体に生じる当たり前の変化なのだと知り、コレステロール値が増え始めても慌てないことが大事です。
男性との違いを知って脂質異常症は自分で防ぐ
コレステロールには「悪玉」と呼ばれるLDLコレステロールと「善玉」のHDLコレステロールの2つがあり、働きが異なります。
LDLコレステロール値が高すぎたり、HDLコレステロール値が低すぎたり、もう一つの脂質である中性脂肪が増えた状態が「脂質異常症」。動脈硬化を促進させる要因となります。
しかしそこにも男女の違いがあります。コレステロールが増えたことで心筋梗塞や狭心症のリスクが高まるのは男性で、女性はほとんど影響がないのです。
この性差は一昔前まで医療現場でも考慮されず、必要ではない女性にコレステロール値を下げる薬が出されていたこともありました。最近やっと、遅ればせながら周知され始め、安易な薬の処方は減ってきたようです。
脂質異常症は生活習慣病──つまり医者任せにしてはいけない、自分で防ぐ病気なのだと理解しましょう。まず食事と運動でコレステロール値を整え、薬を使うのは動脈硬化の進み具合を調べてから。これこそが脂質異常症の賢い予防法・対処法です。
次回はコレステロールと中性脂肪の働きについて詳しくご紹介していきます。
*NPO法人性差医療情報ネットワーク「女性外来マップ」では、女性外来を開設している医療機関(2018年現在約300か所)のリストを公開。
URL:
http://www.nahw.or.jp/hospital-info*「女性外来オンライン」(天野惠子先生主宰)では、天野先生ご自身が厳選した女性の健康の回復や維持に役立つ信頼性の高い情報を発信しています。
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