年の初めの正月の今日降る雪のように、この先、佳きことが繰り返し重なっておくれ。
これは天平宝字3(759)年正月に詠んだ歌です。この年は正月と立春が重なる特別な日でもありました。万葉集最後に載せた歌、歌集全体を言祝ぐ大伴家持の心が伝わってきます。
選・文=加賀美幸子(アナウンサー)「万葉集」には約130年の間に詠まれた4500首の歌が収められています。皇室から庶民まで、一人一人の思いから生み出された歌たちです。
「万葉集」の編纂者と言われる大伴家持。人々の心を共有し歌集に記し、後の世に届けた家持の力と心。私たちは今、当時の人たちの生き方・在り方を共有しているのです。
しかし、家持自身は、左遷かどうかは定かではありませんが、奥州にも遣られたり、この歌を詠んだときは因幡国(鳥取県東部)に赴任中でした。
たとえ辛いことがあっても、清くめでたい純白な雪の中に封印し、新しい気持ちで新年を迎えようという家持の気持が伝わってきます。
めでたさだけでなく、喜びも悲しみも雪に心をゆだね祈っているのです。かけがえのない歌、力が湧いてきます。
イラスト/髙安恭ノ介 ・
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