天野惠子先生のすこやか女性外来 第8回(04) 日本の女性医療、性差医療の先駆者で、ご自身の更年期体験も山ほどお持ちの、天野惠子先生の連載「すこやか女性外来」。今回は、天野惠子先生が推薦する、全国・女性外来を紹介します。
前回の記事はこちら>> 【天野惠子先生が推薦】全国・女性外来を訪ねて
順天堂大学医学部附属浦安病院 女性専用クリニック 栗原由美子先生
●前回の記事
コレステロールは自力でコントロール! 薬の前に生活習慣を改善しましょう最先端医療とのスムーズな連携も大学病院の強み
症状改善のカギは、漢方薬と“話すこと”
栗原由美子先生(くりはら・ゆみこ)順天堂大学医学研究科漢方先端臨床医学准教授。順天堂大学医学部卒業。ハーバード大学関連病院での循環器疾患研究で博士号を取得。2007年より当クリニック(水曜)、2022年10月より天野惠子先生の後任として松戸市立総合医療センター女性特別外来(木曜)を担当。循環器専門医、漢方専門医・指導医、総合内科専門医。診断名のつかない不調や複数の症状を漢方薬で
開設は2002年。担当する3人の医師、看護師、受付事務員が全員女性であることと、大学病院の最先端医療とスムーズに連携できること、両方の安心感を兼ね備た女性外来です。
一般外来に“クリニック”の名称がついているのは、開設当初、院内診療所のような独立した一画だったことの名残りだ。患者さんの半数以上が複数の医療機関を経て、ここに辿り着くといいます。
「イライラする、疲れやすい、不眠、便秘、頭痛など不調が多い、診断名がつかない──。一般外来ではなかなか解消しにくい症状に悩むかたにも有効な一手となるのが漢方薬です」(栗原由美子先生)。
栗原先生が患者に渡すために作った漢方薬の説明書き。漢方薬は体のバランスを調(ととの)え、一つの薬でいくつもの症状を改善する力を備えています。たとえば半夏厚朴湯(はんげこうぼくとう)は不安、不眠、動悸、胸痛、喘息など。五苓散(ごれいさん)はむくみ、頭痛、消化器症状、熱中症など。基本的には鎮痛剤や睡眠導入剤は使わず、漢方薬で対応可能だといいます。
医師と看護師が問診。話の中にも解決の糸口
もう一つ、重要なウエイトを占めるのが問診です。診察の前に専任の看護師が約30分話を聞き、医師が診察の中でさらに耳を傾ける2段階で対応。
「何でも遠慮なくお話しください」。医師の診察前に、専任の看護師が問診票をもとにじっくり話を聞く。初診患者の5.6パーセントが話だけで満足したとのデータが、存分に話すことの有効性を物語っています。
「何気ない会話から解決の糸口が見つかることもあります。複数の医療機関で検査をしてもわからなかった体調不良の背景にペットの世話による不眠があるとわかり、漢方薬処方と併せて家族に協力してもらうようアドバイスをしたところ、症状が改善したケースもありました」
腹診や脈診など漢方的手法で診察を行う。特に腹診は漢方薬処方の重要な決め手になるという。循環器内科医の栗原先生は、女性に多く、心電図や画像検査で異常の出ない微小血管狭心症の治療にも力を入れています。
Information
順天堂大学医学部 附属浦安病院
千葉県浦安市富岡2-1-1
撮影/三田村 優 取材・文/浅原須美
『家庭画報』2023年1月号掲載。
この記事の情報は、掲載号の発売当時のものです。