女性の「狭心症・心筋梗塞」の特徴とは?
更年期から気をつけたい心臓の血管にかかわる病気
天野惠子(あまの・けいこ)先生静風荘病院特別顧問、日本性差医学・医療学会理事、NPO法人性差医療情報ネットワーク理事長。1942年生まれ。1967年東京大学医学部卒業。専門は循環器内科。東京大学講師、東京水産大学(現・東京海洋大学)教授を経て、2002年千葉県立東金病院副院長兼千葉県衛生研究所所長。2009年より静風荘病院にて女性外来を開始。閉経すると増え始める心臓の血管が狭くなる病気
「更年期女性の10人に1人に起こる“微小血管狭心症”という病気を知っておきましょう」── 天野惠子先生
「狭心症、心筋梗塞」という病名を耳にする機会は多いのではないでしょうか。心臓の表面を走る血管が狭くなったり詰まったりして心臓を動かす筋肉(心筋)が正常に働かなくなる病気で、主な症状は胸のあたりの強い痛みや圧迫感。心筋への血液が不足して起きるという意味で「虚血性心疾患」と総称されます。
女性よりも男性に多く、閉経前の女性にはほとんど見られませんが、更年期以降、少しずつ増え始めます。
その背景にあるのが、女性ホルモン・エストロゲンの働き。狭心症も心筋梗塞も血管の異常で生じる病気ですが、エストロゲンには血管を守るたくさんの作用があるのです。
しかし閉経前でも喫煙者となると話は大きく変わってきます。たばこに含まれる有害物質がエストロゲンの働きを妨げるため、喫煙習慣があれば20代、30代でも決して関係のない病気だとはいえません。
症状にも性差があります。女性の場合、男性と違って必ずしも胸痛だけでなく、広範囲に及ぶことを理解しておきましょう。
検査で異常が出ない、女性に多い特殊な狭心症
もう一つ、ぜひ知っておきたいのが、心筋の中のごく細い血管の痙攣で起きる「微小血管狭心症」。更年期世代の10人に1人に生じるといわれる特殊な狭心症です。
原因ははっきりわかっておらず、症状が多くの部位にわたり、検査でも異常が出ないことから、なかなか診断されにくい病気だといえます。
医療機関でも理解が進んでいないのが現状ですが、その特徴を頭に入れておくことが大事です。
次回は「狭心症」と「心筋梗塞」が起こる原因と、女性ホルモン・エストロゲンの働きについて詳しくご紹介していきます。
*NPO法人性差医療情報ネットワーク「女性外来マップ」では、女性外来を開設している医療機関(2018年現在約300か所)のリストを公開。
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