天野惠子先生のすこやか女性外来 第9回(03)心臓は命に直結する臓器だけに、ちょっとした痛みや動悸でも心配になるものです。今回取り上げるのは、心臓の血管の異常で起きる狭心症や心筋梗塞。心臓と血管の基本的な構造から、男性と女性では症状が異なること、そして天野先生のご専門で更年期女性に多い「微小血管狭心症」の話へと続きます。
前回の記事はこちら>> 女性の「狭心症・心筋梗塞」の特徴とは?
更年期から気をつけたい心臓の血管にかかわる病気
天野惠子(あまの・けいこ)先生静風荘病院特別顧問、日本性差医学・医療学会理事、NPO法人性差医療情報ネットワーク理事長。1942年生まれ。1967年東京大学医学部卒業。専門は循環器内科。東京大学講師、東京水産大学(現・東京海洋大学)教授を経て、2002年千葉県立東金病院副院長兼千葉県衛生研究所所長。2009年より静風荘病院にて女性外来を開始。循環器内科では、心電図、エックス線、超音波などで心臓の動きや血流を調べる
心臓の症状で循環器内科を受診すると、下表のような検査が行われます。問診ではわからない原因を突き止めたり命にかかわる心筋梗塞を見逃さないために必要な検査だといえます。
また、狭心症は発作時でないと検査結果に表れないため、自動携帯心電計を持ち歩き、発作時に装着して心電図を記録することを勧められるケースもあります。
主な心臓の検査
●基本的な検査
〔安静時心電図〕
拍動に応じて発生する電気信号をとらえ、不整脈や心臓の異常を調べる
〔運動負荷心電図〕
心臓に負担がかかったときの心電図。特に狭心症の診断に有効
〔24時間ホルター心電図〕
携帯型心電計で24時間の心電図を記録する
〔胸部エックス線検査〕
心臓の大きさや形を調べる
〔胸部超音波(エコー)検査〕
心臓の動きや血液の流れを観察する
●精密検査
〔冠動脈CT検査〕
静脈から造影剤を注入し冠動脈の状態を撮影する
〔心臓核医学検査〕
心筋の血流分布を調べる
〔心臓カテーテル検査〕
カテーテル(細い管)を通して冠動脈に造影剤を注入し、血流や血管の状態を見る
〔心臓MRI検査〕
冠動脈の狭窄や血栓の有無を調べる。造影剤を使えない人にも行える
女性の症状は胸痛のほかにおなか、背中、喉、肩など広範囲に表れる
狭心症や心筋梗塞の症状には性差があります。男性が典型的な胸痛が主であるのに対して、女性は胸の症状以外に腹痛や背部痛、あごや喉の痛み、吐き気や嘔吐など実に多様。そのため診断が遅れることも多くなります。
また男性は主に激しい運動やストレスをきっかけに発症しますが、女性は安静時でも起きるという違いがあります。
女性は男性より多様な部位に表れる
急性心筋梗塞の症状(男女比較)
【女性】
腹痛、背部痛、あご・喉の痛み、呼吸困難感、倦怠感、めまい、食欲不振、吐き気・嘔吐、動悸、肩の痛み、失神
【男性】
胸痛、発汗(冷や汗)
De Von HA, Zerwic JJ. Symptoms of acute coronary syndromes:Are there gender differences? A review of the literature. Heart&Lung 2002; 31: 235-45.をもとに作成