世界中に愛されるその秘密 ルイ・ヴィトンのある暮らし 最終回(全14回) 旅にまつわるラゲージからその歴史を始めた「ルイ・ヴィトン」。その後、ファッション、ジュエリー、アートと、常に時代を牽引し、新しいライフスタイル “文化”を作り上げてきました。ルイ・ヴィトンが、なぜこれほど世界中の人々から愛され続けるのか。創業者の生誕200周年を迎え、さらなる進化を続けるその魅力を、パリ特別現地取材を含めご紹介します。
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杏さんと訪ねる「フォンダシオン ルイ・ヴィトン」
パリの西、ブローニュの森に浮かぶ巨大なアートの象徴。「フォンダシオン ルイ・ヴィトン」は、メゾンのクリエティビティを多くの人と共有するように、フランス国内外に近現代アートを発信し続けています。
「歴史ある庭園の中に現れたモダンな建物を見た瞬間から気持ちの高まりを感じました」杏さん
杏さん(あん) 1986年、東京都出身。モデル、女優。テレビドラマ、映画、CM、ナレーションなどさまざまな分野で活躍。自身のYouTubeチャンネル「杏/anne TOKYO」では、料理の腕前や爽やかな歌声も披露。読書、歴史好きでも知られている。一男二女の母。今回の撮影場所アクリマタシオン庭園は、1860年10月6日、ナポレオン3世とウジェニー皇后によって開園された。現在はアトラクションもあり、動物と触れ合うこともできるパリジャンの憩いの場所となっている。杏さんも子どもたちと何度も訪れたことがあるそう。心を豊かにしてくれる老舗メゾンとアートの関係
「ルイ・ヴィトンによる建築としてもモダンで特徴的なアート施設があると聞いて、早く訪れたいと思っていました」という杏さん。
ルイ・ヴィトンは、いつの時代もアートから多くのインスピレーションを受けてきました。特に1990年代からはアーティストとのコラボレーションも多く、新しい文化を作ってきました。
「90年代からLVMHは、ベルナール・アルノー氏の意志によりメセナ活動による文化的、芸術的、人道的なプロジェクトでサポートすることを始めました。
その中でフォンダシオンの設立は不可欠であると考えました。人々が最初に出会うフォンダシオンの芸術作品になる建物は、21世紀の芸術遺産となり大変重要です。そのために世界的な建築家のフランク・ゲーリー氏を招聘することは、設立にとって必要不可欠のことでした」と語るのは、設立から参画したLVMHグループ会長アルノー氏の顧問ジャン=ポール・クラヴェリー氏です。
ジャン=ポール・クラヴェリー LVMH会長兼最高経営責任者ベルナール・アルノー氏の顧問。1982年からジャック・ラング文化大臣キャビネットに従事。その後、パリ・オペラ座総裁付きのプロジェクトディレクターを経て、91年より現職。 パリ市を一望できるテラスにて撮影。後方のアートワークは、常設展示しているアドリアン・ヴィラール・ロハスへの委嘱作品。Where the Slaves live (2014) by Adrián Villar Rojasメゾンのアイデンティティを思い起こさせるトランクを装飾にしたレストラン「ル・フランク」。頭上を優雅に泳ぐ、フィッシュランプ(2014年)はゲーリーのデザイン。Fish Lamp (2014) by Frank Gehry森に浮かぶ船のような、ガラスと鉄鋼でできた独特の建物は、私たちを近現代アートの旅へと誘います。
ここは多くの人々がアートに親しむ空間
杏さんの頭上に見えるカラフルな帯状のオブジェは、ドイツ人作家カタリーナ・グロッセへの委嘱作品。8枚の薄いアルミニウムに塗料スプレーで色をのせた浮遊する絵画のようなオブジェは、2022年秋より常設展示中。Canyon (2022) by Katharina Grosse「上質なものを届け続けるというルイ・ヴィトンの精神がここにも表れていると感じます」杏さん
クラヴェリー氏が「ここは、フォーラム。アートと市民との出会いの場」と話すように、フォンダシオンは近現代アートを促進し、多くの人に親しんでもらうということを指針にしています。
「取り組みとして、小学生グループを開館時間前に受け入れ、企画展の見学を行っています。若い世代にアートに親しんでもらうこと、未来へバトンを渡すことは、私たちの大切な使命の一つです」と、クラヴェリー氏は話します。
「現代アートの難しいというイメージを払拭し、どこか温かさを感じます」と杏さん。フォンダシオンは、企画展のほかにもクラシックコンサート、アーティストへの支援育成や作品の保護など、芸術と文化へ幅広くかかわる活動を行っています。
これからもたくさんのアートに触れていきたい
談・杏今回、満を持してフォンダシオンを訪れました。
上質なものを創り続け、届けてきた歴史あるブランドのルイ・ヴィトンは、私たちに高揚感を与えてくれます。特別な物を観たり、触れたり、感性を刺激されるフォンダシオンでの体験は、ルイ・ヴィトンのアイテムを手に取るということに通じるように思います。
今までは、ルーヴル美術館のように歴史ある場所での作品鑑賞が多かったのですが、今回の『モネ-ミッチェル』展では、現代建築の静寂な空間の中で作品に没入できました。
時代を超えた彼らの作品が融合していくのを感じられた素敵な展覧会でした。フランスの場合、子どもも大人もアートに自由にアクセスできる印象があります。これからもたくさんのアートに子どもたちと一緒に触れていきたいです。
1950年代にモネの晩年の作品がアメリカで再評価され、多くの作品がアメリカに渡った。この展覧会では、3か所のアメリカの美術館の協力のもと、フランスで初めて「アガパンサス」を三連画として展示。Triptyque de L’Agapanthe (1920-1926) by Claude Monet Information
FONDATION LOUIS VUITTON(フォンダシオン ルイ・ヴィトン)
8, Avenue du Mahatma Gandhi Bois de Boulogne 75116 Paris
- 幅広い層にアートを楽しんでもらうため、さまざまなイベント、芸術プログラムに取り組んでいる。年に2回、特別展を実施。 2022年10月よりクロード・モネ(1840-1926年)とジョーン・ミッチェル(1925-92年)、時代も作風も違う二人の作品による対話『モネ-ミッチェル』展が開催中。ジョーン・ミッチェルの回顧展も同時開催中で、両展覧会は2023年2月27日まで。2023年4月には『バスキア×ウォーホール ペインティング4ハンズ』を開催予定。
取材・撮影協力/ルイ・ヴィトン 撮影/武田正彦 スタイリング/Jien CHUNG ヘア&メイク/小峯久乃 取材・文/下田あゆみ 衣装協力/ルイ・ヴィトン
『家庭画報』2023年2月号掲載。
この記事の情報は、掲載号の発売当時のものです。