がんまるごと大百科 第3回【検診編】(02) がんの早期発見を目的に行われる検診ですが、日本ではまったく受けない人と受けすぎている人に二極化しているといわれます。検診の効果を最大限に享受するために検診のメリットとデメリットをよく理解して適切に受診することが大切です。
前回の記事はこちら>> 早期発見に役立つ根拠のある検診を受ける
中山富雄(なかやま・とみお)先生国立がん研究センター がん対策研究所 検診研究部部長。大阪大学医学部卒業。大阪府立成人病センター調査部疫学課課長、大阪国際がんセンター疫学統計部部長を経て、2018年より現職。がん検診の情報をわかりやすく伝える。著書に『知らないと怖いがん検診の真実』など。国が科学的根拠に基づいて推奨するがん検診は5種類
がん検診の目的は、がんを早期に発見し適切な治療をすることでがんによる死亡を減らすことです。そのため検診は自覚症状のない健康な人が対象になります。
そして、多少なりともリスクの伴う検査を健康な人が受けることになるので検診のメリットがデメリットを上回ることが必要で、次の条件を満たすことも欠かせないといいます。
「検診の対象となるがんは罹患者数が多く、かつ死亡者数の多いもので、治療法が確立していること。また、多くの人に安全に実施できる検査方法が存在し精度が高いことも重要です。さらにそのがんによる死亡が検診で確実に減少することが、科学的に検証されていることも必要条件の一つです」。
これらの条件を踏まえたうえで国が推奨するがん検診は子宮頸がん、乳がん、大腸がん、胃がん、肺がんの5種類です(下の表参照)。
「表で示した対象年齢、受診間隔、検査方法に従い検診を受けることで、そのメリットを最大限に享受できます。すなわち放射線被ひ曝ばくなどのデメリットを最小限にとどめながらがんの疑いのあるものを見つけ精密検査につなげられるのです」。
【がん検診の賢い受け方とは?】
●国が推奨するがん検診は5種類
がん種別の対象年齢・受診間隔・検査方法※これ以外のがんの種類・検査方法は、科学的に効果が確立されていなかったり、検診の不利益のほうが大きかったりして推奨されていません。国立がん研究センター がん情報サービス「がん検診について もっと詳しく」を参考に作成●がん検診のメリットとデメリットを知る国立がん研究センターがん対策研究所検診研究部提供資料をもとに作成検診の段階ではがんかどうかの診断はつかないため、「要精検」の通知が届いたら必ず精密検査を受け、専門医に確実に診断してもらいましょう。
検診で精密検査となってもがんと診断される人はごくわずかです。しかし、万が一に備えて精密検査を受けてこそ「早期発見」という検診のメリットを享受できるのです。