“心臓がドキドキ、息がゼーゼー”するとき
動悸は更年期以降によくある症状。心配のいらない加齢現象です
天野惠子(あまの・けいこ)先生静風荘病院特別顧問、日本性差医学・医療学会理事、NPO法人性差医療情報ネットワーク理事長。1942年生まれ。1967年東京大学医学部卒業。専門は循環器内科。東京大学講師、東京水産大学(現・東京海洋大学)教授を経て、2002年千葉県立東金病院副院長兼千葉県衛生研究所所長。2009年より静風荘病院にて女性外来を開始。対処法は「1に腹式呼吸、2に漢方薬」
●自律神経(交感神経と副交感神経)の働き腹式呼吸は副交感神経を優位にし、呼吸や心拍を“ゆっくり”にする
鼻から吸って、口から吐く腹式呼吸をしてみましょう
吐く息に重点を置くのがコツ
自律神経には、体の活動性を高める交感神経とリラックスさせる副交感神経があり、動悸や息切れは交感神経が優位な状態で生じています。
このようなとき、副交感神経の働きを高めることのできる簡単な方法が「腹式呼吸」。鼻から息を吸っておなかを膨らませ、口から息を吐いておなかを凹まし、吸う息より吐く息を丁寧に行うのがコツ。
自然に気持ちが落ち着き、症状も治まってきます。天野先生によると腹式呼吸はめまいや耳鳴りにも効果的だそうです。
動悸・息切れには漢方薬がよく効く
市販薬で試すのも1つの方法
天野先生は、更年期女性の動悸・息切れに漢方薬がよく効くことを実感しています。
まず「不安やイライラなどの精神症状を伴う人には加味逍遙散。気分がふさぎがちで喉や胸がつかえる人には半夏厚朴湯」のどちらかを使い、効かない場合は下表にある第2・第3の選択肢を試します。
漢方薬は体全体のバランスを整える作用があり、ほかの不調も同時に和らげる効果が期待できます。日頃から症状が気になる人は、市販の漢方薬を試してみるのもよいでしょう。
更年期女性の動悸・息切れに
天野先生の漢方薬処方
●イライラや不安、のぼせを伴う
→加味逍遙散(かみしょうようさん)
●喉や胸がつかえる感じを伴う、気分がふさぎがちだ
→半夏厚朴湯(はんげこうぼくとう)
*これらが効かないとき
→柴胡加竜骨牡蠣湯(さいこかりゅうこつぼれいとう)、桂枝加竜骨牡蠣湯(けいしかりゅうこつぼれいとう)、柴胡桂枝乾姜湯(さいこけいしかんきょうとう)、炙甘草湯(しゃかんぞうとう)
食事・睡眠・ストレス解消──。
予防の基本は、やはり生活リズムを整えること
動悸を訴える更年期女性は不眠、めまい、耳鳴り、不安感などの症状を併せ持つことが多く、その背景に夜更かし、運動不足、偏食、過剰なダイエットなど生活習慣の乱れや、仕事や介護の負担などが存在しています。
避けられないストレスも多い年代ですが、まず食事と睡眠の改善からとりかかりましょう。
「夜12時前の就寝、栄養バランスのよい3食」を意識して体の調子を整えることが、運動の意欲にもつながり、心身のストレス軽減の基本にもなります。
動悸が起きたときの心電図を記録できる
診断にも役に立つ「自動携帯心電計」
小型で携帯可能。動悸が起きたその場で心電図や心拍数を記録することができる。動悸で受診しても症状が起きている最中でないと心電図でとらえることができません。そこで役に立つのが「自動携帯心電計」。
動悸を感じたときに心電図や心拍数を計測・記録できるので、医師に自覚症状のみでなく波形や数値でそのときの状況を伝えることができます。
天野先生は診察だけでは診断の難しい患者さんに渡して使用をすすめ、判断材料として役立てています。
心電計を左乳房の下(心尖部と呼ばれる心臓の下方の先端部。拍動に触れる部分)に当てて計る。*NPO法人性差医療情報ネットワーク「女性外来マップ」では、女性外来を開設している医療機関(2018年現在約300か所)のリストを公開。
URL:
http://www.nahw.or.jp/hospital-info*「女性外来オンライン」(天野惠子先生主宰)では、天野先生ご自身が厳選した女性の健康の回復や維持に役立つ信頼性の高い情報を発信しています。
公式サイト「女性外来オンライン」:
https://joseigairai.online/YouTube
「女性外来オンラインチャンネル」はこちら>>