母娘(おやこ)いっしょにもっと元気で、いきいきと 第6回(全11回) これからの日々を心身ともにもっと健やかに過ごすためのさまざまなヒントをお伝えします。たとえば、母と娘がよい関係で年を重ねるコツ、いつまでも美しく若々しくいる秘訣、健康のためにできること──などなど。母、娘どちらの立場のかたにも役に立つ「人生を豊かにするヒント」を一緒に探していきましょう。
前回の記事はこちら>> 中井美穂さんが語る、母と娘の“推し活”の楽しみ「“推し”は元気の源です!」
舞台の上で輝きを放つスターにときめき、お芝居や音楽を堪能する時間は、心に張りや生きがいをもたらす、若さの秘訣。年間250公演以上のステージを観劇している中井美穂さんに、母娘での楽しみ方を伺いました。
【心ときめく“推し”に出会いに、いざ劇場へ!】お母さまと出かけることも多いという歌舞伎座にて。「お芝居はもちろん、華やかな劇場で過ごす時間のすべてが母娘の楽しみです」と中井美穂さん。宝塚も歌舞伎も、30年近く観続けて
「幼い頃からスポーツよりも文化系。中学・高校でも演劇部でしたので、今の観劇ライフの下地はその頃からできていたのかもしれませんね」という中井美穂さん。日本大学藝術学部時代は三谷幸喜さん率いる「東京サンシャインボーイズ」などの演劇に触れ、クリエイションの現場が身近にある環境で過ごしました。
しかしテレビ局に就職しアナウンサーになると、なかなか自分の時間が取れなくて、観劇熱もしばらく下火に。そのような中で出会ったのが、当時宝塚歌劇の月組トップスターだった天海祐希さんの舞台でした。
「知人に誘われて初観劇した宝塚の公演が天海祐希さん主演の『ハードボイルド エッグ』でした。それまで宝塚って『ベルサイユのばら』のような歴史物のイメージを抱いていたのですが、この舞台は現代劇で、とにかく天海さんがかっこよくて……。どっぷりと“沼”にはまりました(笑)」
“沼にはまる”とは、最近の流行語で、魅力的な人物やジャンルに夢中になり、抜け出せなくなること。同様に情熱を注いで応援するスターのことを“推し”と呼び、劇場に通ったりファンクラブに入ることを意味する“推し活”という言葉も、よく目にするようになりました。アイドルを応援する女性ファンの心情を描いた宇佐見りんさんの小説『推し、燃ゆ』は、第164回芥川賞を受賞しています。
「当時はまだ“推し”という言葉はありませんでしたが、天海さんが退団するまで、すべての公演に通いました」
演劇にしてもミュージカルにしても、最初の入り口となる作品が大切、という中井さん。
「今思うと宝塚歌劇との出会いが本当にいい作品だったのは幸せなことでした。その後、会社を辞めてフリーになって時間に余裕ができたこともあり、宝塚だけでなく母と一緒に歌舞伎に出かけたり、お友達の出演する小劇場に足を運んだり、観劇の回数がどんどん増えていきました」
中井美穂さんなかい・みほ 日本大学藝術学部放送学科卒業。1987年、フジテレビ入社。95年に退社しフリーアナウンサーに。『鶴瓶のスジナシ』『華麗なる宝塚歌劇の世界』 など演劇に関する番組も多い。著書に『12人の花形伝統芸能-覚悟と情熱』。「母と娘で同じ舞台に気持ちが上がり、時間を共有できるのは幸せなこと」(中井さん)いつしか“演劇といえば中井美穂”というのが定評となり、俳優のインタビューや公演の紹介といった仕事が増えていきます。最近では年間250から300の公演に足を運ぶそう。
「読売演劇大賞の選考委員もさせていただいていますが、専門家のかたがたに混じっての審査では、私は“観客”としての視点を特に大切にしています。自分のアンテナに引っかかり、ピンときた作品や役者さんを、ご紹介していくことができれば」