納得できる治療のために病院選びのポイントを知る
若尾文彦先生（わかお・ふみひこ）
国立がん研究センター がん対策研究所 事業統括。横浜市立大学医学部卒業。1988年、国立がんセンター中央病院に入職。放射線診断部医長、がん対策情報センターセンター長などを経て、2021年より現職。信頼できるがん情報の発信と普及、がん対策評価などに取り組む。病院の探し方や近隣の病院の特徴を知っておく
がんと診断されたとき、あるいはがんの可能性が高いといわれたとき、望む治療や療養に合う病院を探し、選択することは、納得のいくがん治療を受けるための鍵となります。
告知直後には患者本人も家族も混乱してしまうものです。一方で、がんの治療は後戻りできません。そのため、どの病院でどのような治療を受けるのかについて、治療が始まる前にできるだけ情報を集めておくことが大切です。
急性の症状が出ているとき、あるいは急激に悪化するという見通しがあるときには病院選択の時間がないことも考えられます。また、希少がんでは治療できる病院の選択肢が限られるケースもあります。
とはいえ、2人に1人ががんになる時代、診断前から病院の探し方や近隣にどのようなタイプの病院があるのかを知っておくと、いざというときに役立つかもしれません。
自分のがんの状態について把握するのが第一歩
日本でがんの治療を行っている病院は、国立がん研究センターのようながんの専門病院、大学病院、都道府県立病院や市立病院といった公的病院、私立の民間病院など運営母体や機能がさまざまです。
また、治療しているがんの種類も多様で、自分が希望する治療を行っているかどうかはあらかじめ調べておくほうがいいでしょう。
「まずは、自分が診断を受けた、あるいは疑いのあるがんについて、その種類、進行度（病期、ステージ）、想定される治療法を担当医にしっかり確認することです。それから、そのがんの治療ができる病院を絞っていきます」と若尾先生。
検診や健康診断、人間ドックで要精密検査という結果が出たときには、その精密検査を受ける病院で治療先について相談することが可能です。
また、まずは近隣の病院で検査を受け、がんという診断が確定してから病院を探す方法もあります。
生活習慣病などの持病で診察を受けているかかりつけ医がいる場合には、その医師に相談することもできます。
若尾先生は、治療を受ける病院を決めるときには「病院の医療体制、生活支援体制、情報公開、通院の負担のポイントを考えることが大切です」と話します。
次回からは、これらのポイントについて詳しく解説していただきます。
選択肢となる病院のがん治療の特徴を知る
（1）がんの治療医師の専門性、手術や放射線治療に使う機器、栄養サポートや緩和ケアなどの体制は病院ごとに異なる→選択肢となる病院の情報をホームページやがん情報サービスなどで調べましょう
（2）がん診療連携拠点病院等全国に453か所→厚生労働大臣が指定する「がん診療連携拠点病院」「地域がん診療病院」を探してみましょう
（3）がん相談支援センター情報集めの際に頼りになるがん相談支援センター→がん診療連携拠点病院等にあるがん相談支援センターでは病院探しの相談にも乗ってもらえます
