カルチャー&ホビー

なんと2000年以上も前から愛されてきた花「カーネーション」。注目の新生は?

2023.04.17

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麗しきカーネーションを知る

新習慣「母の月」に贈る 進化する「カーネーション」で贈り花の新世界 第1回(全5回) 初夏の陽気に、色とりどりの切り花が店先に並び、ひときわ花贈りが楽しい5月。花を贈る風習は、今や「母の日」一日のものでなく、1か月間の楽しみへと広がりを見せています。 なかでも「母の日の花」といわれてきたカーネーションが、色も形も麗しく、進化しているのをご存じですか? 見慣れた花とは印象を一新した個性あふれる品種が続々登場して、今や、美しいブーケやアレンジメントに欠かせない存在になりつつあります。カーネーションの最新事情と、人気フローリストによる贈り花の新世界へご案内しましょう。

2000年の時を超えて世界中で愛され続ける花


遠い昔、可憐な姿で野に咲いていたカーネーションは、今やその姿が想像できないほど、華麗な変身を遂げています。昔も今も、時代を先取りするように、ファッショナブルな進化をし続けるカーネーションの魅力をご紹介します。

カーネーションを知る

1837年にフランスで出版された『Dictionnaire Universel d'Histoire Naturelle』より。絵師はCharles HenryDessalines d'Orbigny。rawpixel.com


カーネーションの原産地は、南ヨーロッパ、西アジアで2千年以上前には既に観賞されていたといわれています。西アジアやスペインなどではモスクの壁を彩るアラベスクに、この花をモチーフにしたものが多くあり、現在でもタイルやファブリックに古い時代の姿を見ることができます。

13世紀頃にスペイン、フランス、イギリスなどに広まり、16世紀初頭から育種が始まり、各国で盛んに行われてきました。大輪化を目指し花弁数は多くなり、ぐんと立体的な花形へと進化します。花色もより華やかに。

なかでもバイカラー(複色系)では赤と白、黄色と赤など個性的な配色に多くの植物愛好家が魅了されました。膨大な品種が作出され、カーネーションはチューリップやラナンキュラスなどとともに、古典園芸植物を代表する人気の花となりました。

カーネーションを知る

1896年にイギリスで出版された『Favourite flowers of garden and greenhouse』。Bois, D.; Frederick Warne(Firm);Herincq, B.;Step,Edward;Watson, Williamによるもの。Biodiversity Heritage Library

20世紀に入ると、育種の舞台はアメリカへと移り、1939年に一茎一花のカーネーション’ウイリアム・シム’が作出されます。この品種は非常に枝変わりしやすく、これを親として、多くのスタンダード咲き品種が誕生。「シム系」と呼ばれ、日本にも1950年頃から導入されています。

くすみ系の花色が大人気! しゃれたバイカラーにも注目


現在では、ここまで花色が豊富な花は他に見当たらないほど、カーネーションの花色が増えています。最近のトレンドは「くすみ系」と呼ばれる少しグレーを含んだ色みで、特にくすみ系のピンクは色数が多く、かわいらしさがありながら大人っぽい雰囲気も感じさせる花色が揃っています。

切り花の流通事情に詳しい「大田花き」の宍戸 純さんによると「くすみ系のカーネーションは、入荷すると即完売。母の日の需要に応えられるか心配になるほどの人気」だそうです。そして、バイカラーの品種にしゃれた花色が増えたり、少し黒を含んだアンティーク感がある花色が登場したりと話題が絶えません。

流通するカーネーションの約7割は実は輸入品。あまり知られていませんが主な産出国はコロンビアです。コロンビアは四季がなく一年中安定して栽培できるうえ、1日の寒暖差が大きいので花の発色がよく、上質なカーネーションの大生産地となっています。

注目の新生カーネーション




今、話題のカーネーションを集めたら、こんなにも美しく麗しい花が勢揃い。たった1本でも絵になるスター品種です。A.香川県の香花園が栽培した‘ペシモンミナミ’。少し渋みのあるアプリコット色が新しい。B.同シリーズを代表する人気の‘サクラミナミ’。 C.美しいバイカラーの絞りが魅力の‘レディシーン’。D.カーネーションでは珍しいフリンジ咲きの‘シャララ ピコ’。E.花弁の縁に色が入るタイプの代表品種‘ノビオ バーガンディ’。 F.くすみ系のピンクが揃う‘シャララ’の基本色はこのピンク。G.くすみ系のピンクの代表品種‘オルゴール’。H.パステル系の黄色が新鮮な‘ポリミナミ’。I.少しだけ黒を含む落ち着きのある花色が人気の‘バイパーワイン’。ファブリック/マナトレーディング東京ショールーム

一方、約3割を担う国内栽培でも、育種から栽培までを手がける第一人者といえるのが、香川県高松市のカーネーション農家「真鍋農園」と「香花園」です。

2つの農家が協力して生み出した’ミナミ’シリーズは、花径が10センチ近くある大輪のスタンダード品種で花色も豊富。「華やかで光沢がある花自体が素晴らしいうえに花持ちが抜群によく、茎が折れにくいので、とても扱いやすい」と語るのは「フルール トレモロ」の藤野幸信さん。

この’ミナミ’シリーズはムラなく上質な花に仕上がるのも魅力で、海外での評価が高まる中、今ではコロンビアで生産された花がヨーロッパ各地に送り出され、日本に逆輸入されるほどになりました。

カーネーションの華麗なる変遷を辿ると、この花が持つ無限とも思える可能性にあらためて感嘆するとともに、これから先、どれだけ私たちを驚かせてくれるのか、新たなる品種誕生への期待に心が躍ります。

〔特集〕進化する「カーネーション」で贈り花の新世界

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撮影/本誌・西山 航 スタイリング/阿部美恵 取材・文/高梨さゆみ 協力/宍戸 純
『家庭画報』2023年5月号掲載。
この記事の情報は、掲載号の発売当時のものです。
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