アンリ・マティス 希望の色と光 第2回(全6回) 世界中の人々の心を捉えて離さない20世紀を代表する画家、アンリ・マティス。作風や技法を常に変化させ、彫刻やステンドグラスを含め多くの作品を遺した偉大な芸術家が創作し、暮らした地を辿り、なぜ私たちがこんなにも彼の作品に惹かれるのかを探究します。
前回の記事はこちら>> [生誕の地 北フランス]“灰色の地”で絵画に目覚める
“私は北の男だ”Moi, je suis du Nord.
──Henri Matisse
マティスが使用していた眼鏡。奥に見えるベッドは、マティスが結婚の際に購入し、終生使い続けたもの。「マティス 家族の家」には、一家の仕事道具なども残されている。“絵の具箱を手にしたとたん、これが自分の人生だとわかった”。マティスは父の命で地元にて代訴人見習いをしていた頃、母から贈られた絵の具で初作品《本のある静物》(次のページ)を描きました。65年に及ぶ画家人生の最初の一歩。晩年、故郷に錦を飾りました。
「1951年、地元有力者がマティスに美術館設立への協力を願い出たところ、彼は70点を超える寄贈を約束。翌年、生前唯一のマティス美術館が設立されたのです」とカトー= カンブレジ・マティス美術館副館長ソフィー・ル・フラマンさん。
カトー= カンブレジ・マティス美術館副館長フラマンさん(右)と地域文化PR担当のメッサジェさん(左)。マティスは現場の写真と図面をもとに、作品の配置も指示。新しい美術館に移設後も、それが守られています。
「マティスは1日8時間働き、物事をきちんとやり遂げることを重んじる真面目さと、友人や家族を盛り上げる明るさの両面を持っていました。まさに“北の男”なのです」と地域文化PR担当のレティシア・メッサジェさん。
冬が長く、光が弱い“灰色の地”に生まれ、色と光を求め続けた人生の源流がここにあります。
画家を夢見た部屋と故郷の美術館
アンリ・マティス 家族の家(ボアン)
マティス美術館(カトー=カンブレジ)美術館は今年の5月22日から改装工事のため一時閉館される。カトー=カンブレジ・マティス美術館Musée Matisse Le Cateau-Cambrésis
Palais Fénelon,Place du Commandant Richez
59360 Le Cateau-Cambrésis
TEL:+33 3 59 73 38 00
https://museematisse.frアンリ・マティス 家族の家La Maison Familiale d’Henri Matisse
26 Rue du Château, 02110 Bohain-en-Vermandois
TEL:+33 3 23 60 90 54
https://www.musee-matisse.comマティスの『JAZZ』などを出版したニースの美術出版社「テリヤード」の社長邸のためにデザインしたダイニングルームの復元。マティスが生まれたカトー=カンブレジ近郊の風景。雲がたれこめ、どんよりとした天気が続く。