天野惠子先生のすこやか女性外来 第13回(03)国内外の研究で認知症発症のリスク要因がいくつか明らかになり、話題となっています。それらの結果が示すのは、“認知症は生活習慣病である”ということ。すなわち、「これさえ行えば予防できる」という万能の予防法は、ないのです。天野先生がすすめる5つの認知症予防策を参考に、自分に合った方法を実行しましょう。
前回の記事はこちら>> 認知症は“生活習慣病”です。予防のために今、できること
天野惠子先生静風荘病院特別顧問、日本性差医学・医療学会理事、NPO法人性差医療情報ネットワーク理事長。1942年生まれ。1967年東京大学医学部卒業。専門は循環器内科。東京大学講師、東京水産大学(現・東京海洋大学)教授を経て、2002年千葉県立東金病院副院長兼千葉県衛生研究所所長。2009年より静風荘病院にて女性外来を開始。天野先生がすすめる5つの認知症予防策
(1)家に閉じこもらない~知的活動で脳に刺激をインプット戸外で体を動かし、知的活動を楽しむことも認知症の予防につながる。外出しなくなった、周囲や社会との交流が減った、誰ともしゃべらない日が珍しくない......。このような生活は脳の機能も運動機能も低下させ、認知症のリスクを明らかに高めます。
そうなる前に、日常的に外の世界とつながる知的活動を続け、何かしらの役割を担う居場所を作っておくことが大事。
とはいえ、1人で動き出すのが難しい場合も。家に閉じこもりがちな家族や身近な人への働きかけも必要です。
(2)バランスよく食べる~特定の栄養素より多様な食材を青魚に含まれるドコサヘキサエン酸(DHA)、豆製品、乳製品、お茶など、認知機能の維持に効果的とされる栄養素や食材は多くても、これさえ摂っていれば安心という決定的なものはありません。
要は、塩分、動物性脂肪、糖質、加工食品をなるべく控え、多様な食材を使った栄養バランスのよい食事を心がけること。献立を考えて食材を揃えたり、新しい料理に挑戦する作業も脳の活性化によい影響を与えます。
(3)体を動かし、よく眠る~血を巡らせ、関節をしなやかに週1回以上の運動習慣がある人は、1回未満の人より40パーセント認知症の発症リスクが低くなるという研究結果があります。
運動は認知症の原因となる物質を脳から取り除き、発生を抑制すると考えられています。体を動かすことは脳の血流を促し、骨や筋肉を維持して関節の動きを潤滑にし、心地よい睡眠をもたらします。
特別なことでなくても、家事や買い物など日常的な活動量を増やすのも効果的です。
(4)病気を予防・治療する~生活習慣病やうつ病を治しておく高血圧、糖尿病、肥満など認知症のリスク要因であることが判明している生活習慣病は、まず予防が第一。そして定期的に健康診断を受けて、早期に発見し治療にとりかかりましょう。
放っておくと動脈硬化が進み、脳卒中や心疾患を引き起こし、脳血管性認知症の原因にもなります。
また、うつ病から認知症になるケースも少なくありません。喫煙はいうまでもなく認知症だけでなく万病のもと。今からでも禁煙を。
(5)早めに補聴器を使う~難聴が気になったらまず検査を認知症のリスクは軽度の難聴で約2倍、中度で3倍、重度で約5倍高まるといわれています。音の情報量が減り脳の活動が低下するだけでなく、社会的孤立を招くことの影響が大きいのです。
会話がおっくうになり、人づきあいに消極的になり、社会とのコミュニケーションが減ると認知機能の低下につながります。
本人や家族が聞こえが悪いと感じたら、耳鼻咽喉科を受診し、早めに補聴器を使い始めましょう。