激しい運動のエネルギー源は「糖質」なので脂肪を減らす効果は少ない。減量目的の運動ならウォーキングがおすすめ
〔解説してくださるかた〕
大湯リハビリ温泉病院 常務理事 小笠原達記念温泉医学研究所 所長・温泉保養館館長 池田充宏(いけだ・みつひろ)先生筑波大学大学院にて疾病の運動処方の研究を開始、博士号を取得。45万人以上の健康管理に携わり、そのビッグデータの解析から誰もが無理なく取り組める健康管理法を導き出し、多くの企業や自治体を指導してきた。また、国内外のトップアスリートの能力評価、減量、トレーニング、リハビリにもかかわる。運動をすると体温が上昇し基礎代謝量を高める効果も
「体に負荷のかかる激しい運動をしないとやせない」と思っている人は多く、学生時代に運動をやっていた人ほど、こう考える傾向が強いといいます。
しかし、「息切れするような激しい運動(無酸素運動)に脂肪を減らす効果は少ないのです」と池田先生は指摘します。
なぜなら激しい運動の主なエネルギー源は糖質だからです。
「同量のエネルギーを消費する運動でも種類により効果は大きく異なります。やせることを期待するなら脂肪を燃焼させる有酸素運動に取り組むことが重要です」。
有酸素運動にはウォーキング、ジョギング、エアロビクス、サイクリング、水泳などいろいろな種類があります。減量目的ならいつでも簡単に実践できる運動を選ぶのが望ましく、その点ではウォーキングが取り組みやすいでしょう。
「ウォーキングには健康効果も期待できます。10分間のウォーキングでも習慣化すれば心臓や肺、血管によい影響をもたらし、特に運動不足の人に大きな健康効果があることがわかっています。英国公衆衛生庁は1日10分のウォーキングを促す『アクティブ10』と呼ばれるアプリを無料配信しキャンペーンを展開しているほどです」。
運動によってやせたい場合は「脂肪」を主なエネルギー源とするウォーキングなどの有酸素運動に取り組もう。また、運動は体温を上昇させる効果が高いことも知られています。体温が1度上がるごとに基礎代謝量は約13パーセント増加します。
『日本人の食事摂取基準2020年版』によると、50代女性の基礎代謝量は1110キロカロリーなので、体温が1度上がるだけで約144キロカロリー増加します。毎日運動して体温を1度上げたとすると年間で5万2560キロカロリー増となり、7.3キロの脂肪を燃焼させられる計算です(脂肪1キロの燃焼には7200キロカロリーが必要)。
「減量において体温を上げることはかなり効果的です」。
ちなみに減量目的の場合、有酸素運動は体温が低下する朝の時間帯に行いたいもの。運動で朝から体温を上げておくと、比較的一日中、体温の高い状態で過ごせるため、基礎代謝量を高めるうえで有効です。
運動により消費エネルギー源は異なる〔有酸素運動と無酸素運動の特徴〕
長寿科学振興財団「健康長寿ネット/身体活動・トレーニング法」を参考に作成息切れするような激しい無酸素運動は、運動能力を高めたいときに有効で、体温が上昇する夕方から夜にかけて行うのが効果的とされる。
ただし、酸素が十分に取り込めないことで心臓や血管に大きな負担がかかるため、運動中にアクシデントを起こしやすく注意が必要だ。特に朝の時間帯に行うのは避けたい。
イラスト/平松昭子 取材・文/渡辺千鶴
『家庭画報』2023年6月号掲載。
この記事の情報は、掲載号の発売当時のものです。