【天野惠子先生が推薦】全国・女性外来を訪ねて
回生病院 女性漢方外来・ペインクリニック科 野萱純子先生
●前回の記事
目の病気の原因は「加齢」だけではありません。知っておきたいリスクと対策背景にあるストレスや無理に気づくことが第一歩
長引く痛みに漢方的診断・漢方薬を駆使
野萱純子先生(のがや・じゅんこ)香川医科大学卒業。同附属病院麻酔・ペインクリニック科講師(2008年まで)、同女性外来診療部勤務(2021年まで)。麻酔、疼痛治療、緩和医療に従事し木下優子先生に漢方医学を師事。2008年回生病院に赴任、女性漢方外来・ペインクリニック科開設。在宅診療 敬二郎クリニックに週1回勤務。2022年より香川大学医学部臨床教授。漠然とした痛みのメカニズムを探っていく
野萱純子先生の専門は疼痛治療。性差医療や漢方の知識も生かし、月経困難症や更年期症状、特に慢性痛に対応しています。
「人にわかってもらえないつらさや原因が不明な不安が症状を強く感じさせ長引かせる」と話す野萱先生が心がけるのは、本人が理解し安心できる医療。
治療に使うツボを説明する際に用いる経絡人形。「痛みがいつどのように始まったかを伺うと、たいていストレスや体の無理が関係しています。まずご自身が痛みのバックグラウンドに気づくことが不調を脱する糸口になります。同時に西洋医学的な検査や所見に漢方的な診断を重ね、痛みのメカニズムを探っていきます」
炎症か神経過敏か、冷えか瘀血(おけつ=血流の滞り)か、メンタルの影響か――。漠然とした痛みの正体が露(あら)わになると本人も納得して治療に臨めるといいます。
痛みの神経伝達をブロックする近赤外線療法。首の星状(せいじょう)神経節に当てると自律神経の安定をもたらす。神経ブロックの注射液と注射器。消炎鎮痛剤や近赤外線療法、神経ブロック療法のほか、漢方薬は欠かせません。「温めるときは桂枝加朮附湯(けいしかじゅつぶとう)、血流改善に疎経活血湯(そけいかっけつとう)、ストレス軽減に四逆散(しぎゃくさん)など体質や痛みの性質に合わせて使える漢方薬は疼痛治療にとても効果的です」。
応接間のような椅子や絵画で、患者の緊張がほぐれるよう配慮の行き届いた絨毯敷きの診察室。在宅医療の経験を通して更年期の大切さを実感
更年期女性が訴える痛みの中で目立つのが関節痛。骨が華奢なのに家事などで手を酷使するため腱鞘炎やヘバーデン結節にもなりやすいのです。
「ペットボトルや瓶のふたは素手でなく道具を使って楽に開けましょう。痛みや不調はできるだけ予防し治療して更年期を生き生きと過ごしていただきたいですね」。
アロマテラピーには痛みで忘れがちな幸福感を補う効果がある。よりよい更年期の先に幸せな老年期がある――。高齢者の在宅診療にもかかわる野萱先生の言葉には説得力があります。