がんまるごと大百科 第7回【手術編】(03) がんを根治させるには、がんのある部分をできるかぎり取り除くことが重要です。その唯一の方法が「手術」であり、固形がんの多くでは最初に選択される治療になります。今回は手術を安全に受けるために患者が事前に取り組むべきことを中心にお届けします。
前回の記事はこちら>> 体調を万全に整えて手術による合併症を減らす
金光幸秀先生(かねみつ・ゆきひで)国立がん研究センター 中央病院 大腸外科 科長。名古屋大学医学部卒業。名古屋大学医学部第二外科、愛知県がんセンター中央病院消化器外科部を経て、2013年より現職。全国の臨床試験を主導し大腸がんの治療法の確立に努め、『大腸癌治療ガイドライン』の作成にも従事する。手術後の病理検査の結果で術前の診断が変わることも
手術を終えると翌日から「離床リハビリテーション」が始まります。がんの種類や病状、合併症の程度によって異なりますが、1~2週間で退院となります。
退院後は手術日から約1か月後に外来を受診し、手術で摘出したがん組織の病理検査結果の説明を受けます。
画像診断で確認していたリンパ節転移なども術後の病理検査でもう一度詳しく調べるため、これらの結果次第では手術前の診断と病期が変わることがあります。これに伴い、治療方針が変更される可能性もあります。
【早期回復を目指してリハビリを】
■離床リハビリテーション
ベッド上で過ごす時間が長くなると筋力が低下し、深部静脈血栓症や肺塞栓症、肺炎などの合併症が起こりやすくなるため、手術翌日から立ち上がったり、歩いたりする離床リハビリテーションが一般的になってきた。こうしたリハビリは術後のせん妄を予防する効果もあるとされる。
国立がん研究センター「がん情報サービス/手術(外科治療)もっと詳しく」などを参考に作成
低侵襲手術の普及により手術の質とQOLが向上し、術後はもとの生活に戻れる
治療が手術だけでよい場合は定期的に経過観察を続けます。その期間は5年です(乳がんは10年)。
「低侵襲手術の普及により手術の質とQOLが向上し、術後はもとの生活に戻れるようになりました。半面、5年経つまでは常に再発のリスクが伴うため、がんにならない生活を心がけることが大切です。例えば大腸がんでは、運動や肥満予防に再発率を低下させる可能性があることが示唆されています」。
一方、標準治療に従って放射線療法や薬物療法を追加する必要があるときは次の治療ステップに進みます。
「進行がんの場合、手術だけで完全に取り除くことは難しいため、手術で取りきれなかったがんを放射線で焼き切ったり、目に見えない微小ながんを薬物で叩いたりして根治の確率を上げていくのです」。
次回(
家庭画報2023年8月号)では、3大治療法の一つである放射線療法について詳しく紹介します。
取材・文/渡辺千鶴
『家庭画報』2023年7月号掲載。
この記事の情報は、掲載号の発売当時のものです。