本草閣・秋山あかねさんに習う ゆらぎ世代の「夏養生」
漢方の知恵で“気・血・水”を巡らせて夏冷えを改善します
「本草閣」9代目当主・薬剤師
秋山あかねさん本草研究家。医学薬学のみならず東洋の深淵を伝える志を持ち、幅広く活躍する。温度差などが発汗を妨げ、冷えと不調をもたらす
猛暑・酷暑に加え、効きすぎた冷房、室内外の温度差、冷たい飲み物の誘惑──。ただでさえ代謝が落ち、ホルモンバランスの乱れで調子を崩しがちな更年期世代にとって、夏はまさに試練。冷えから不眠、疲労、下痢、むくみ、食欲不振、うつなど多くの不調を生じ、秋冬まで持ち越す女性のなんと多いことでしょう。
その要因を「冷気や温度差、更年期の自律神経の乱れが汗を出にくくしていること」と「本草閣」当主の秋山あかねさんは説明します。
「汗をかくと新陳代謝が促され、体のすみずみに『気・血・水』(体を構成する基本物質)が滞りなく巡ります。それによって余分な物が排出され、寒熱のバランスが整い、適度な体温調節が行われる──。この循環が夏の元気の源なのです」
漢方では、季節や環境に応じて暮らすことを健康の基本と考えます。季節や体質に合った食べ物で、「気・血・水」を巡らせ、寒熱のバランスをとる薬膳は、暑すぎたり冷えすぎたり、胃腸をこわしやすい夏にぜひ実行したい養生法だといえます。
栄養満点の旬の食材とバランスを整える食材を
まず取り入れたいのは栄養豊富な旬の食材。たとえば夏野菜の冬瓜や青パパイヤには、体内に溜まった熱と水を外に出す働きがあります。
「それだけだと体を冷やしてしまいますが、火を通し、生姜や紹興酒や体を温める性質の和漢素材を組み合わせると、栄養があって冷えも解消する料理になります」
もう一つは体に合う食材や和漢素材。体質を「気・血・水」の滞りや過不足でとらえる漢方独自の理論で分類し(8/3公開予定の記事で紹介)、これを解消する性質の食材・素材でバランスを整えるのです。
「和漢素材は冷えだけでなく、潤い不足やむくみ、イライラの軽減など女性に嬉しい働きを持つものが豊富。体調に合わせて加減し、自分仕様にグレードアップできるのも薬膳の魅力です」。
漢方の知恵を生かした薬膳で、夏を“おいしく”乗りきりましょう。
〔特集〕体を温めて不調を整える 「冷えを改善する夏の薬膳」 (全9回)
撮影/本誌・西山 航 スタイリング/横瀬多美保 フラワーアレンジメント/恒石小百合 ヘア&メイク/遠藤芹菜 取材・文/浅原須美
『家庭画報』2023年8月号掲載。
この記事の情報は、掲載号の発売当時のものです。