体を温めて不調を整える「冷えを改善する夏の薬膳」 第4回(全9回) 女性の冷えた体に優しくて、心も温まり、家庭のキッチンで作れるおいしい夏の薬膳料理を教えてください──。編集部の“わがままな”要望に、本草研究家の秋山あかねさんと広東料理の大崎 竜料理長が応えてくださいました。漢方的養生の考え方とともに和漢素材をたっぷり使ったレシピをお届けします。
前回の記事はこちら>> 大崎 竜料理長に教わる、夏の薬膳料理
詳しいレシピは次回の記事よりご紹介します。“蒸す”調理法が、素材の甘みを引き出します
深くて上品な味わいに素材の持ち味が生き、自然な甘みも感じるテイストを楽しんでいると、最後にふわっと広がる和漢素材独特の香り。
広東料理の名店・ヘイフンテラスの大崎料理長が夏の冷えに悩む『家庭画報』読者のために、スペシャルな薬膳のレシピを考案してくださいました。
苦いイメージのある和漢素材を何種類も使いながら、おいしさと心身へのいたわりの両方を併せ持つ料理に仕上げるコツは何なのでしょうか。
「ポイントは“蒸す”調理法。ゆでたり煮出したりすると時間は短縮できますが、水の分量や火力によって成分の溶け出す量が異なるため味が定まらず、苦みも際立ってしまいます。一方、食材に分量の水を加えてラップをして、ゆっくり時間をかけてひたすら丁寧に蒸すと、成分が逃げず味が安定し、雑味も出ません。料理ののど越しも抜群によくなるのです」
ポイントは丁寧な調理と素材の組み合わせ
素材の組み合わせにも工夫が。「棗(なつめ)、竜眼、羅漢果など果実系の素材には自然な甘みがあり、体も温めてくれます。これらを高麗人参など苦みの勝る素材と組み合わせて蒸すと、甘みの後から苦みがほんのり追いかけてくる。二段階の複雑な味になるのです」。
食べられる和漢素材はエキスとしてだけでなく、刻んだり、油で揚げてクリスピーにして使うのも“大崎流”。「形や食感も楽しめたら、さらに体によさそうに感じられるでしょう?」
食して30分後、気がつくと体の中がぽかぽか、汗もじんわり。最高においしい、というだけの料理ではないことを、体がしっかり証明していました。
(次回、レシピ紹介に続く)
ヘイフンテラス料理長 大崎 竜さん
横浜市出身。30年以上広東料理に携わる。ザ・ペニンシュラ東京館内の全中国料理を監修。
ヘイフンテラス
住所:東京都千代田区有楽町1-8-1 ザ・ペニンシュラ東京2階
TEL:03(6270)2888
定休日:月曜
「2023夏の五行和漢メニュー」の一品。ジュンサイの龍井茶割り。~2023年8月31日提供。 〔特集〕体を温めて不調を整える 「冷えを改善する夏の薬膳」 (全9回)
撮影/本誌・西山 航 スタイリング/横瀬多美保 フラワーアレンジメント/恒石小百合 取材・文/浅原須美
『家庭画報』2023年8月号掲載。
この記事の情報は、掲載号の発売当時のものです。