「口腔ケア」で健康革命 歯や口腔の健康が全身の健康と密接にかかわっていることがわかってきました。歯周病があると動脈硬化や糖尿病、果ては認知症のリスクまで高まります。一方で、歯周病を治すとこれらの病気は改善していきます。まさに全身の病気は、口腔から始まっているのです。アンチエイジングを見据えた50代からの口腔ケアに今日から取り組みましょう。
前回の記事はこちら>> 集中連載「口腔ケアで健康革命」第2回では、鶴見大学歯学部教授・斎藤一郎先生に、病気の始まりを知らせるとも言われる「ドライマウス」について教えていただきました。
鶴見大学歯学部教授
斎藤一郎先生ドライマウスは病気の始まり!唾液が全身の健康と若さを保つ
口の中には歯周病菌とは逆に全身の健康と若さに好影響を与えるものがあります。それは唾液で、人間の体において重要な働きをしていることがわかってきました。
そもそも唾液は血液を原料とし、三大唾液腺と呼ばれる「耳下腺」「顎下腺」「舌下腺」でつくられ、これらの唾液腺から口腔内に分泌される唾液量は1日1~1.5リットルにもなります。
がんのリスクを低下させる驚きの成分も唾液中に存在
「唾液には歯の保護・再石灰化作用、消化作用、抗菌作用、粘膜保護作用、粘膜修復作用といった、口と全身の健康を維持するうえで欠かすことができない働きがいくつもあります」と鶴見大学歯学部教授で、ドライマウス(口腔乾燥症)の第一人者である斎藤一郎先生は説明します。
唾液が最も多く分泌されるのは食事中です。唾液には食べ物のでんぷんを分解する消化酵素アミラーゼが含まれており、食べ物を柔らかくして、胃の消化を助けてくれます。
さらに唾液に含まれるムチン(粘性たんぱく質)にはオブラートのような作用があり、食べ物を包み込んで飲み込みやすくします。また、刺激物を食べたときも口の中や喉、食道、胃などの粘膜を保護し、刺激物から体を守ります。
ムチンには細菌やウイルスを絡め取って体内への侵入を食い止める働きもあり、同様に抗菌作用を持つ物質はリゾチームやラクトフェリンなど唾液中にはたくさん存在します。
「唾液にはアンチエイジング効果で注目される成長ホルモンの一種であるEGFやNGFと呼ばれる物質が含まれていることもわかっています。また、食べ物の発がん物質がつくり出す活性酸素を分解するペルオキシダーゼなどの抗酸化酵素も含有されており、老化に伴う疾患の進行を抑制する働きも期待できます」と斎藤先生は唾液の知られざる効果について話します。
こうした唾液の恩恵を享受するには、唾液をたくさん分泌することが肝心です。「なぜなら唾液の質と量は正比例するからです」(斎藤先生)。
唾液の量が多ければ全身の健康と若さを保つレベルも高まります。