心潤す緑陰の美術館へ 第2回(全10回)作品と向き合うことで感性を磨く、知的好奇心を満たす、あるいは心身をリフレッシュする……。目的はさまざまですが、いつ訪ねても「心潤す時間」をもたらしてくれるのが、美術館の第1の魅力です。夏休みシーズン。喧騒から離れた涼やかな美術館で心潤う休日を過ごしてみませんか。第1部はアートな遠足、第2部はアートな自由研究をテーマにお届けします。
前回の記事はこちら>> 第1部 家族で楽しむ“アートな遠足”
安田侃彫刻美術館 アルテピアッツァ美唄[北海道・美唄]
右・安田 侃《無何有 MUKAYU》 1993年 高さ148×幅218×奥行き12センチ ブロンズ
左・安田 侃《めざめ MEZAME》 1997年 高さ78×幅90×奥行き68センチ 白大理石
丸屋根、木造のレトロな体育館の広々とした空間に置かれた作品に、子どもたちも興味津々。次から次へと触れて回り、大喜び。炭鉱の町の歴史遺産に調和する、心を映す彫刻
札幌から特急列車で約30分、空の広い自然豊かな町、美唄(びばい)。イタリアを拠点に世界で活躍する彫刻家、安田 侃(やすだ かん)の故郷であるこの地に、「安田侃彫刻美術館 アルテピアッツァ美唄」はあります。
写真/小川重雄
青々と光る芝生、生い茂る大樹。美しい自然の中に彫刻が点在することで、風景すべてが作品として輝いて見える。なお、木造校舎の1階は現役の幼稚園。美術館は園児たちの遊び場でもある。シンプルでなめらかな形の中に堂々たる存在感を宿す彫刻群は、館の敷地であるなだらかな起伏の山の端に置かれ、大自然と見事に調和しています。約40点ある作品はすべて触れたり、腰かけることも可能。実際に撫でると、そのすべらかさ、心地よさに驚くはず。
「子どもはもちろん、大人にとっても新鮮な体験です。彫刻と自由に向き合ってください」と、安田さんもメッセージ。
安田 侃(やすだ・かん) 1945年、美唄市生まれ。大理石の産地、伊・ピエトラサンタにアトリエを構えている。そしてこの美術館の核となるのが、閉校した古い木造の校舎と体育館を利用したギャラリーです。
古い木造校舎の2階をギャラリーに。作品は展示されるというより、「そこにいる」というような親しみが溢れる。かつて北海道有数の炭鉱町として賑わっていた美唄。閉山で多くの人が去りましたが、そんな土地の記憶を宿しているのがこの校舎なのです。人が集う場として再生させることで、土地の歴史を引き継いでいます。
季節ごと、そして一日の光の変化の中でも表情を変える彫刻の美しさに惹かれ、繰り返し足を運ぶ人も多いこちらの美術館。彫刻、自然、人間が混ざり合う、心洗われるような体験ができる場所です。
敷地内の「カフェアルテ」では、地元の人気ベーカリー「ストウブ」のパンで作るサンドイッチを提供。「フォカッチャ」ドリンク付き1100円、「コーヒー」500円(ともに税込み)。 Information
安田侃彫刻美術館 アルテピアッツァ美唄
北海道美唄市落合町栄町
- 2019年8月7日~18日は『思い出の炭鉱写真展』を開催。
〔特集〕“アートの国・ニッポン”を楽しみつくす夏休み 心潤す緑陰の美術館へ
表示価格はすべて税込みです。
美術館の開館時間および入館・観覧料(すべて税込み)は、企画展・特別展で異なることがあります。展示替え期間などには臨時休館になる場合があります。
事前にご確認のうえお出かけください。展示作品は掲載写真と異なる場合があります。
撮影/本誌・西山 航 取材・文/柴田 泉
「家庭画報」2019年7月号掲載。
この記事の情報は、掲載号の発売当時のものです。