心潤す緑陰の美術館へ 第4回(全10回)作品と向き合うことで感性を磨く、知的好奇心を満たす、あるいは心身をリフレッシュする……。目的はさまざまですが、いつ訪ねても「心潤す時間」をもたらしてくれるのが、美術館の第1の魅力です。夏休みシーズン。喧騒から離れた涼やかな美術館で心潤う休日を過ごしてみませんか。第1部はアートな遠足、第2部はアートな自由研究をテーマにお届けします。
前回の記事はこちら>> 第1部 家族で楽しむ“アートな遠足”
和久傳ノ森 森の中の家 安野光雅館[京都・京丹後]
10年かけて育った8000坪の森の中に建つ美術館(右)とレストラン(左奥)。美術館は手前のコンクリートの回廊を経て館内に入ると、木と光を駆使した空間が迎えてくれる。周辺には工房や畑などがある。森づくりから始まった、豊かな食とアートのミュージアム
自然豊かな京丹後・久美浜に2017年6月に誕生した美術館「森の中の家 安野光雅館」。
丹後に料理旅館として創業した人気料亭「和久傳」が2007年より56種3万本の植樹をして育んだ「和久傳ノ森」に佇み、「工房レストランwakuden MORI(モ ーリ)」も併設しています。
美術館には画家・安野光雅の心温まる絵画を展示し、この3年の間に『赤毛のアン』『メアリ・ポピンズ』の原画などを公開してきました。
(c)空想工房
安野光雅《『歌の風景』アヴィニョンの橋の上で フランス/アヴィニョン」》2001年 81×64センチ 水彩画
世界の愛唱歌の故郷を訪ねて描いたエッセイ画集『歌の風景』の原画。
(c)空想工房
安野光雅《『野の 花と 小人たち 』れんげ 》1976年 65×53.5センチ 水彩画
自然や野の花への温かいまなざしが感じられる作品。存在感を放ちながら周囲の景観と調和を見せる真っ黒な杉板張りの建物は世界的建築家・安藤忠雄氏が設計。
安野光雅の繊細で優しい作品、館長で和久傳の会長・桑村 綾さんの自然の恵みへの感謝や地方創生への思いに寄り添う、その名のとおり家のような佇まいです。
館内も木を基調とした空間が広がり、作品と森と建物が呼応するやすらぎの時を創出しています。
90歳を超えてなお精力的に創作を続ける安野光雅の最新作、絵本の原画や本の挿絵などを展示する美術館。屋根の勾配を生かした天井や木を使ったプリーツ状の壁、景観と光を取り入れた窓など、建物も見どころの一つ。レストランでは地の食材を使った料理を提供し、ショップでは美術館オリジナルグッズやMORI限定のお菓子や食材を販売。
人気のれんこん菓子「西湖(せいこ)」やお総菜を製造する工房見学、季節に合わせてのワークショップを体験することもでき、丹後の自然の中、心も体も癒やされる食とアートが堪能できます。
Information
和久傳ノ森 森の中の家 安野光雅館
京都府京丹後市久美浜町谷764
- 2019年6月5日~9月2日は作品を通じて息づく自然に触れられる『野の花と小人たち』を開催。『歌の風景』も同時に展示。
〔特集〕“アートの国・ニッポン”を楽しみつくす夏休み 心潤す緑陰の美術館へ
表示価格はすべて税込みです。
美術館の開館時間および入館・観覧料(すべて税込み)は、企画展・特別展で異なることがあります。展示替え期間などには臨時休館になる場合があります。
事前にご確認のうえお出かけください。展示作品は掲載写真と異なる場合があります。
撮影/本誌・西山 航 構成・取材・文/西村晶子
「家庭画報」2019年7月号掲載。
この記事の情報は、掲載号の発売当時のものです。