医師の診察や治療を受ける前には、当たり前のようにインターネットなどで情報を収集する時代になりました。
しかし、情報が多すぎて何を信用したらいいのかわからず、結局何も解決せずに終わることもしばしば。
ネット情報を中心に、信頼できる情報の求め方・見分け方、そして医師と共有して医療に生かす方法を伺います。
尾藤誠司(びとう・せいじ)先生1965年、愛知県生まれ。岐阜大学医学部卒業後、国立長崎中央病院、国立東京第二病院(現・東京医療センター)、国立佐渡療養所に勤務。95年〜97年UCLAに留学し、臨床疫学を学び、医療と社会とのかかわりを研究。総合内科医として東京医療センターでの診療、研修医の教育、医師・看護師の臨床研究の支援、診療の質の向上を目指す事業にかかわる。著書に『「医師アタマ」との付き合い方』(中公新書ラクレ)、『医者の言うことは話半分でいい』(PHP)ほか。ネット情報の特性を知り、検索の深追いは避ける
インターネット上に溢れる大量の医療情報に振り回されて、見当違いな不安に陥ったり、間違った自己判断を下してしまう人が増えています。
病院選びや診断、治療法など、私たちの健康状態や生死をも左右しかねない医療情報は、飲食店などの情報に比べて、より慎重にとらえ、扱わなければなりません。
「ネット社会を生きる現代人には、医療情報の持つ特性を知り、玉石混淆の情報を見分けて、正しく生かす術を身につけることが求められます」と尾藤誠司先生はいいます。
病院や名医の口コミ情報に投稿されやすいのは、よきにつけ悪しきにつけ強烈な体験で、大半の人が持つはずの中間的な感想は反映されにくいものです。
また何百人もの医師を抱える大病院の評価と、個々の医師の評価が一致しないことはいうまでもありません。
そして「頭痛」「めまい」など症状を入力して検索したときに表示される無数の情報の中には、命にかかわる難病や聞いたこともない珍しい病気が必ず混ざっています。
「インターネット検索を深追いすると、ろくな情報にたどり着きません。悪い情報ほどインパクトが強く、無視しにくいものだからです。こうして追い立てられるように検索を続けるうちに最悪のシナリオができ上がり、一人で絶望してしまう─。ところが実際に診察してみると、まったくの取り越し苦労であるケースが大半なのです」
一部分を切り取り、不自然に強調した情報が少なくないことも知っておく必要があります。
たとえば「〇〇薬の副作用」。すべての薬に作用と副作用があるのに、一方だけを取り上げて危険だと煽る情報が公平だとはとてもいえません。
偏った情報を鵜呑みにして、医師に処方された薬を勝手にやめたりするのは危険極まりないこと。診断し、治療法を組み立てるのはあくまでも医師です。
なぜこの情報を話題に出すのか、はっきりした目的を持って聞く
自分なりに吟味して取捨選択した情報は、医師に伝え、医療に生かさなければ意味がありません。それが症状改善のヒントになることも考えられますし、医師も患者の得た情報を共有したいのが本心です。
「一方で医師には“自分はこの病気に関する情報の圧倒的優位者である”との意識があり、疑われ、否定されたと感じると傷ついてしまう繊細さも持ち合わせています」
そんな医師に、自分が独自に得た情報を上手に伝え、医療に生かすにはちょっとしたコツが必要です。
まず、患者はあくまでも情報の素人であるとのスタンスを崩さないこと。
そして“自分は何のために、この情報についての医師の意見を聞きたいのか”具体的な意図を添えて伝えること。
いずれにしても、医師の診断に勝る情報はないとの認識を持つことが大事だといえます。