心と体の新習慣 第10回(全11回) 世界的に新型コロナウイルスの感染が止まりません。一方で、外出自粛などの時期を経て、多くの地域で新型コロナウイルスと共に生きる“ニューノーマル(新しい常識・常態)”が始まっています。産業衛生や感染症などの専門家に、今後の新しい生活様式について聞きました。
前回の記事はこちら>> ※2020年6月30日現在の情報をもとに記載しています。『家庭画報』2020年9月号掲載。この記事の情報は、掲載号の発売当時のものです。 withコロナ時代のフレイル予防【実践編】
健康習慣の中でもフレイルの予防として注目されているのが運動、食事、口腔ケア、知的活動を中心とした人づきあいです。日常生活においてどのように取り入れていけばよいのか、それぞれの実践ポイントについて5人の専門家に伺いました。
今回は口腔ケアについて斎藤一郎先生に伺います。
【口腔ケア】口まわりの「筋力トレーニング」と「よく嚙むこと」で唾液分泌を促す
〔お話ししてくれるのはこの方〕斎藤一郎先生鶴見大学歯学部教授。2002年より現職。08年から4年間、鶴見大学歯学部附属病院病院長を務める。専門は口腔乾燥症(ドライマウス)。アンチエイジングの観点から新たな歯科医療を展開。日本抗加齢医学会理事。ドライマウス、歯周病だけでなく全身の疾病予防にも役立つ
ドライマウスを防ぎ、歯周病だけでなく全身の疾病予防にも貢献している唾液。口に入れた食べ物や、嚙むという動作が口腔内の唾液腺を刺激することで分泌されます。
「糖尿病やシェーグレン症候群などの病気や薬剤の副作用で唾液が出にくくなっている場合は、主治医と相談のうえ対処する必要があります。しかし、健常なかたも普段の生活の中で唾液をしっかり出す習慣をつけておくことがとても大事です」と斎藤一郎先生はアドバイスします。
最も簡単な方法は、食べ物をゆっくりとよく嚙むこと。
嚙む回数と時間が増えればその分唾液の量も増え、唾液に含まれる成分が食べ物とよく絡み、活性酸素を薄める効果も発揮されます。一口分の食べ物を口に入れたら20回以上嚙むように努めましょう。
「つい早食いになってしまうかたにはガムを嚙むことをおすすめします。シュガーレスで、虫歯を防ぐ効果のあるキシリトールが甘味料中50パーセント以上含有されているガムを選ぶとよいでしょう」。
私たちは嚙むとき、両側のあごの関節、左右の側頭筋や咬筋などを無意識にコントロールしながら動かしています。
簡単そうで実は複雑な嚙む動作を円滑に行うには普段から口まわりの筋肉を鍛えておくことが欠かせません。
日常的にあまり使わない筋肉を意識的に動かす顔ヨガなども効果的。
そして日頃から意識しておきたいのは、口の中を常に清潔に保つこと。これは唾液分泌に限らず口腔ケアの基本中の基本です。