withコロナ時代の健康術 第1回(02) withコロナの新しい生活様式で生きなければならないこの時代に、50代以降から衰えやすくなる器官や機能を取り上げ、健康を保つための方法を紹介します。今回は「全身の健康に関係する血管を若く保つ」をテーマに千葉大学医学部附属病院病院長の横手幸太郎先生にお話を伺いました。
前回記事を読む>> “血管年齢を調べる”新しい検査が始まっています
健康診断や人間ドック、内科の診察などでは、一般的に調べられてきた血圧、LDLコレステロール、総コレステロール、血糖値などに加え、新たな検査項目や新しい検査が登場しています。
血管の老化はさまざまな病気を招く>>〔解説してくださるかた〕横手幸太郎(よこて・こうたろう)先生千葉大学医学部附属病院 病院長
同大学大学院医学研究院 内分泌代謝・血液・老年内科学 教授
1962年生まれ。88年千葉大学医学部卒業。96年スウェーデン国立ウプサラ大学大学院博士課程修了。2009年に千葉大学大学院医学研究院細胞治療内科学講座(19年に内分泌代謝・血液・老年内科学講座に名称変更)教授に就任。11年から同大学医学部附属病院副病院長。20年4月から病院長、同大学副学長に就任。コレステロールや中性脂肪の新しい検査項目が登場
例えば、脂質異常症の検査項目に「ノンHDLコレステロール」があるのを見たかたもいるかもしれません。
「動脈硬化との関連が強い悪玉のLDLコレステロールのほかにも、いわば準悪玉のコレステロールが数種あります。これらは単独では測定しにくいのですが、総コレステロール値から善玉のHDLコレステロール値を除くとノンHDLコレステロールとしての合算した量がわかるのです。LDLコレステロール値に加え、このノンHDLコレステロール値も高ければ、動脈硬化のリスクが高い証拠です」と横手先生。
また、食後の血中脂質値、特に中性脂肪値も注目されているそうです。
「1日のうち、一般の検査時のような空腹状態は実際は特殊で、食後の状態を調べるほうが現実を反映しているという考え方があります。最近、食後の中性脂肪値の上昇も動脈硬化に影響することがわかってきました。これから測定が進む可能性がありますね」。
部位による血圧や脈波の差を調べる検査が普及してきた
動脈の状態をみる、新しい検査も普及してきました。心臓足首血管指数(CAVI)、脈波伝播速度(PWV)、足関節上腕血圧比(ABI)で、いずれも胸と足首や腕にカフをつけ、それぞれの血圧の高さや脈波の速度をみることで動脈硬化の度合いを調べます。
生活習慣病患者は検査してもらえる場合もあるので、主治医に聞いてみましょう。人間ドックでは組み込まれているところもあります。
一部の医療機関や薬局では指の爪の生え際の毛細血管をみる毛細血管スコープが使われるようにもなっています。
病院やクリニックなどで行われる血管の検査の例
●毛細血管スコープ
指の爪の生え際の毛細血管を顕微鏡で拡大する。血管がヘアピン状で揃っていれば良好。血管がまばら、ねじれている、不揃いなどの様子がみられると老化していると考えられる。
●動脈硬化の程度をみるCAVI・PWV・ABI
心臓足首血管指数(CAVI)、脈波伝播速度(PWV)、足関節上腕血圧比(ABI)はいずれも動脈硬化の度合いをみる。CAVIとPWVは動脈のしなやかさ、ABIは詰まり具合の目安となる。
血管の状態を調べる主な検査とその特徴
●頸動脈エコー頸動脈に超音波を当てて画像化し、頸動脈の壁の厚さを測って、動脈硬化の度合いをみる。
●心臓足首血管指数(CAVI)あお向けに寝て、胸と腕、足首に装置をつける。血圧が変化したときの動脈の膨らみ具合の変化をみる。動脈が硬いと膨らみ具合が少なく、CAVIの数値としては高くなる。
●脈波伝播速度(PWV)あお向けに寝て、上半身あるいは腕と足首の脈波を測定。動脈が硬くなっていると脈波が速く伝わるので、その速度を調べる。
●足関節上腕血圧比(ABI)あお向けに寝て、足首と腕の血圧を測定。脚の動脈が詰まっていると腕の血圧に比べて足首の血圧が低くなるため、その比を計算する。
●眼底検査目の奥の網膜を撮影する。毛細血管からの出血の有無などをみることができる。
取材・文/小島あゆみ イラスト/にれいさちこ 撮影/八田政玄
『家庭画報』2021年1月号掲載。
この記事の情報は、掲載号の発売当時のものです。