秋の七草のひとつでもある葛。葉の裏側が白く目立つことから「裏見草」とも呼ばれ、恋や恨みの歌に詠まれることもあった。定家葛と身は成て 此御跡にいつとなく
離れもやらで蔦紅葉の 色焦がれ纏はり
選・文=大倉源次郎(大倉流小鼓方十六世宗家)
葛は強い繁殖力を持ち、気が付けば野原一面を覆い尽くす。
定家の執心が蔦葛となり式子内親王の墓に纏わりついたという伝説は、金春禅竹作のこの能が広めたと思う。
即ちこの作品に共感する人々が時代を超えて多く居たということだ。
『家庭画報』2021年10月号掲載。
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