夢と憧れの宇宙旅行時代へ 宇宙画報 第4回(全9回) 気宇壮大な夢物語でしかなかった民間宇宙旅行が、遂に現実のものとなりました。今、注目の民間宇宙旅行の現在進行形を追いました。
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民間の新型宇宙船(クルードラゴン)により夢の宇宙旅行の幕が切って落とされた
野口聡一(のぐち・そういち)1965年神奈川県生まれ。東京大学大学院修士課程修了。石川島播磨重工業を経て、96年NASDA(現JAXA)に入社。2005年7月スペースシャトル「ディスカバリー号」、09年12月~10年6月日本人初のロシア宇宙船「ソユーズ」、20年11月~21年5月民間の新型宇宙船「クルードラゴン」に搭乗し、3度の宇宙滞在を成功させる。現在、米国ヒューストンに単身赴任中。3女の父。米スペースX社が仕掛けた宇宙革命
2020年11月、私を3度目の宇宙へと運んだのは「クルードラゴン」という、アメリカの民間企業「スペースX」社が生み出した新型宇宙船でした。その船内はこれまで飛行したアメリカの「スペースシャトル」やロシアの「ソユーズ」とは明らかに異なっていました。
ひと言でいうなら、スタイリッシュ。船内は白と黒に統一され、操縦席にはタブレットをはめ込んだようなシンプルなタッチパネルが並んでいます。それはコックピット内にぎっしりと並んだボタンや計器類、そして壁を無数に這うケーブルを見慣れた私にとって、ショールームのようでした。
かつて複雑な操縦を強いられたコックピットは、今や画面表示に従って指1本で操作できるスマホ感覚になったのです。加えて、クルーが腰掛けるシートは繭のように体を包み込み、大きくくりぬかれた船内の窓からはみずみずしい地球の様子が見て取れます。おまけに我々が身につけているのは、ハリウッド映画『バットマン』の衣装担当が手がけたフィット感あふれる軽快な宇宙服なのです。
これまで夢物語と思われていた宇宙旅行の世界がここにある! そんな確かな感覚に、我々4人の乗組員は興奮を隠すことができませんでした。