カルチャー&ホビー

実用品であり、世界観を表現するキャンバス。人々を惹きつける縄文土器の鮮烈さ

2022.04.08

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私たちに生きる縄文の遺伝子 4月・器(うつわ) 放れ

縄文土器

画像提供/笛吹市教育委員会 日本遺産・山梨県指定文化財 桂野遺跡出土大形深鉢(渦巻文土器)

縄文土器の器面は立体的な文様で覆われる。特に縄文時代中期(約5500~4000年前)に、その特色が顕著になる。山梨県笛吹市桂野遺跡出土の大形深鉢は、口縁を失っているものの、残る器体には立体的な文様が縦横に渦巻き、強烈な印象を与える。「器放れ」したその造形は、ルーブル美術館にある「サモトラケのニケ」の女神像同様に、残欠ゆえの神々しさすら漂う。

世界観の表現



文=小林達雄(考古学者)

縄文土器は古今東西のヤキモノの中で際立って独特である。開いた口縁から肩を張り、腰を絞って尻で底となる。単なる器にしては変化が縦横無尽で、世界中どこを探してもないような特徴を持っている。

弥生土器は簡素なのに縄文土器は賑やかで繁縟だ、とは、日本美術の歴史を説く人士の同工異曲の言い分であるが、これは出来合いのカタチを見て、ココロを読んでいない。

縄文人は、土器を実用に供しながらも、自分たちの世界観を表現するキャンバスに見立てていたのである。

鳥獣戯画から浮世絵、漫画へと繫がる、日本流の奇想の原点である。
『家庭画報』2022年4月号掲載。
この記事の情報は、掲載号の発売当時のものです。
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