写真/ozono akiranature pro.amanaimages飛べるけど飛ばない贅沢。それが孤島の進化
選・文=川上和人(鳥類学者)
メジロのような目の周りの白いリングと、その周りの黒い三角模様が特徴である。この鳥は世界で3つの島にしかいないユニークな鳥だ。小笠原諸島の母島と向島、妹島である。
撮影/川上和人実はこれらの島の近くにはメグロが棲める島が他にもある。しかし、メグロはそこに移動しない。そして3つの島の間でも互いに移動しないことがわかっている。島間の距離はわずか5キロ、スズメでも簡単に飛べる距離だ。
撮影/川上和人メグロは毎日木々の間を飛び回り昆虫や果実を食べる。飛翔力は十分にあるのだ。生息地では密度が高すぎて、多くの若鳥がなわばりを持てずに死んでいく。それでも隣の島には行かない。不思議でしょうがないが、それが彼らの選んだ進化なのである。
『家庭画報』2022年5月号掲載。
この記事の情報は、掲載号の発売当時のものです。