写真/坂東俊輝〈aflo〉悲劇か、誤解か、真実はいまだ闇の中
選・文=川上和人(鳥類学者)
アカヒゲは、鹿児島から沖縄の島々で繁殖する小鳥である。
この鳥は3つの亜種に分けられている。そのうちの一つウスアカヒゲという亜種は、八重山諸島の島である与那国島だけにいる。この亜種は1921年に1個体が記録され、これに基づいて新亜種として発表された。ただしほかに記録はなく、すでに絶滅している。
写真/afloそう書くと悲劇的な物語に思える。しかし、そもそもそんな亜種は存在しないという説もある。北方で繁殖するアカヒゲは秋に南に渡る。そんな越冬個体が定住個体と誤解され、新亜種として発表された可能性があるのだ。なお、当時は新亜種を見つけるのが流行した時代でもある。
はたして実在なのか、幻なのか。その答えは誰も知らない。
『家庭画報』2022年9月号掲載。
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