4月 柴門新月図
国宝《柴門新月図》紙本墨画 室町時代 応永12(1405)年 サイズ=縦130.1×横31.6センチ 画面上部に多数の漢詩を書き込む「詩画軸」は応永年間に流行し、おもに仲間うちで作成・鑑賞された。本作は杜甫の七言律詩「南鄰(なんりん)」を題材とし、制作年を記した序文と18もの詩が添えられた、中世の禅僧文化を代表する作品。画面下部には、柴葺きの門の前で主人が客人を見送る場面が描かれている。少し離れて立つのは従者の童。選・文=藤田 清(藤田美術館館長)時代の最先端をゆく室町の禅僧。彼らの中国に対するあこがれが、水墨画に漢詩を添える知的な遊びとなった。
テーマは別れ。別の寺院へと赴く若い僧へ送られたもの。煌々と輝く月の下、別れを惜しむ風景に、18人の禅僧が漢詩を添えた。新天地での活躍を応援する詩が多い中、愛おしくて堪らない感情が溢れた詩も見られる。
去り行く愛らしい僧と、喜々とした表情で寄せ書きをする18人の若い僧を思い浮かべながら愉しみたい。
作品のエピソードトーク
動画で藤田 清館長と谷松屋戸田商店の戸田貴士氏による、本作品のエピソードトークをご覧いただけます。
撮影/小野祐次 構成/安藤菜穂子
『家庭画報』2021年04月号掲載。
この記事の情報は、掲載号の発売当時のものです。