6月 黒樂茶碗 銘 太郎 黒樂茶碗 銘 次郎
《黒樂茶碗 銘 太郎》(右)《黒樂茶碗 銘 次郎》(左) 覚々斎宗左(かくかくさいそうさ)〔原叟(げんそう)〕作 18世紀 表千家6代覚々斎宗左が作り、樂家5代宗入が釉薬を掛けて焼いたもの。覚々斎はしばらく自ら愛玩したのち、「太郎」を長男の如心斎(表千家7代)に、「次郎」を次男の宗乾(裏千家7代)に、赤釉を掛けた「三郎」を三男の一燈(裏千家8代)に与えた。「太郎」の口縁、「次郎」の腰まわりなどに見える「カセ釉」(かさぶたのような斑点)に、宗入の特徴が見られる。選・文=藤田 清(藤田美術館館長)表千家六世の覚々斎原叟宗左は、3人の子供にそれぞれ、「太郎」「次郎」「三郎」の茶碗を与えた。美術館のコレクションを築いた藤田傳三郎もまた、男子3人の父。この茶碗を入手するため奔走するが、生前手に入れることができたのは「次郎」のみで、「太郎」は叶う事がなかった。
傳三郎の没後、長男の平太郎は、「太郎」をやっとの思いで手に入れる。子を思う父。想いに応えた子。茶を飲むための道具が、茶碗を通じた心の交流を教えてくれて、心も温かく潤してくれる。
作品のエピソードトーク
動画で藤田 清館長と谷松屋戸田商店の戸田貴士氏による、本作品のエピソードトークをご覧いただけます。
撮影/小野祐次 構成/安藤菜穂子
『家庭画報』2021年06月号掲載。
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