パンデミックの時代が求める音楽 ワルツの熱情 第8回(全12回) 明と暗が表裏一体となったワルツの底知れない魅力を訪ねます。
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レオポルズベルクから眺めたウィーンの街を流れる、現在のドナウ川の本流。本流の左上に少し見えているのが、池のように残された昔の“古きドナウ”。ウィーンの街は、ウィーンの森に囲まれている半盆地で、入り込むその風が北西部の森に当たり、気候にも変化を与えるため、ワイン造りに適しています。その森は四季折々を通じて美しく週末にはのんびりと散歩を楽しむ人々の姿が見受けられます。
人口192万人のウィーンの街をぐるりと囲むウィーンの森。レオポルズベルク(標高425メートル)やカーレンベルク(同484メートル)の山頂からは、ドナウ川やウィーンの街が一望のもとに見渡せます。
スイスの国境に近いドイツの黒い森(シュヴァルツヴァルト)に端を発する全長2860キロのドナウ川は、ウィーンに入り、かつては数本に分かれ、蛇行して流れていた河川でした。そのため雪解け後には氷塊が流れ、大雨の時には氾濫し、家屋が流され人命が奪われました。なお、恐れられたのは、水が汚れたその後に蔓延する疫病だったのです。そこで大規模に調整する治水工事が始まり、完成したのが1875年のことでした。
さてこのドナウ川の色ですが、本流の色は地質学的なこともあり濁っていることが多いのです。けれど現在では、天気のよい日や時間帯や光線の加減により、少ない日数ではあるものの実際に青く見えることもあります。やはり流麗な曲のイメージを思いつつ散策したくなってきます。
この曲の2番目の作詞者、フランツ・フォン・ゲルネルトの美しい歌詞が流麗な音楽とマッチし、皆に親しまれ、世に広まっていき「第二の国歌」といわれるまでになったのです。
下のフォトギャラリーから詳しくご覧いただけます。 撮影/シモン・クッパーシュミート ウィーン取材コーディネート・取材・文/武田倫子 編集協力/三宅 暁(編輯舎)
『家庭画報』2022年1月号掲載。
この記事の情報は、掲載号の発売当時のものです。