日本発の美術として超絶技巧作品を新しいジャンルに
鐘ヶ江英夫さん鐘ヶ江英夫さん(かねがえ・ひでお)京都・大徳寺総門前に店を構える「古美術 鐘ヶ江」2代目当主、アートディレクター。京都造形芸術大学環境デザイン科を卒業後、家業の美術商「古美術 鐘ヶ江」を継ぐ。超絶技巧の作家が多く所属。2022年3月11日~13日開催の「アートフェア東京2022」で今回紹介した作家たちの作品を展示。明治時代の超絶技巧作品は、もともと、150年くらい前にパリ、ウィーンで開催された万国博覧会でその高度な技術が注目され、外貨を稼ぐ産業になっていました。
私が「古美術 鐘ヶ江」に入った2008年も、約9割が海外のお客さまでした。その頃国内では、工芸作品は絵画などより注目度が低く、美術館で展示されない時期が続いたこともあり、先代の私の父もかなり苦労していました。
現代の超絶技巧の作家が注目を集め始めたのは、2017年に三井記念美術館で開催された「驚異の超絶技巧!─明治工芸から現代アートへ」からです。そこで一気に、工芸技術を有する現代作家たちの名と作品が全国に広まりました。
超絶技巧は、卓越した技術と修練の上に成り立っている美術ともいえます。私たちは、ただ工芸で素晴らしいものを作るだけではなく、現代アートに敬意を払って思考芸術を取り入れることもテーマにしています。そうすれば、よりハイブリッドでよい作品ができると思うのです。今はデジタル領域などテクノロジーも進み、新しい概念が生まれています。工芸とデジタルの融合など、昔にはなかった作品を作ることができる可能性が広がっています。
また私たちは、“工芸”だけで終わるつ もりはなく、“工芸と現代アート”、どちらの可能性も併せ持つ美術を目指しています。そこから、既存のジャンルの枠を飛び越える、新しい日本発の美術が発信できればと思っています。
下のフォトギャラリーから、詳しくご覧いただけます。 取材協力/鐘ヶ江英夫 住谷晃一郎 写真提供/古美術 鐘ヶ江
『家庭画報』2022年3月号掲載。
この記事の情報は、掲載号の発売当時のものです。