ソフィー・ルノワールさんパリ近郊ブーローニュ生まれ。13歳から俳優として活躍。独学で写真を学び、2020年にパリで初めて作品を発表。自宅のリビングでくつろぐソフィーさん。“幸福の画家”と呼ばれたルノワールから受け継いだもの
パリの西、閑静な住宅街ブーローニュの一角に居を構えるソフィー・ルノワールさんは、両親の代からここに暮らします。曽祖父は印象派の偉大な画家、ピエール= オーギュスト・ルノワール、父は映画の撮影監督クロード・ルノワール、大叔父は『フレンチ・カンカン』などで著名な映画監督ジャン・ルノワールと、ルノワール家の系図を紐解くと、その錚々たる顔ぶれに驚くばかりです。
ピエール= オーギュスト・ルノワールフランス中部のリモージュ生まれ。20~21歳のときに、パリのグレールの画塾と国立美術学校に入学。モネやシスレーらと出会い、戸外での制作を中心とする印象派の代表的な画家となる。その後、彼独自の作風で名声を確立。©Bridgeman Images/amanaimagesソフィーさん自身も13歳のときに映画の世界に入り、俳優として活動。エリック・ロメール監督の映画『友だちの恋人』でセザール賞新人賞を受賞。以来、多数の映画やテレビドラマ、舞台などに出演してきました。
また独学で写真を学び、2020年にパリのプライベート・ギャラリーで作品を発表するなど、写真家としての活動にも意欲的です。
「曽祖父について聞かれることは多いです。偉大な画家であることに変わりはありませんが、私にとってはファミリーであり、優しく天賦の才を持つひいおじいさまという存在です」と華奢な容姿と表情にどことなくルノワールの面影を湛え、チャーミングな笑顔を向けます。
左・ルノワールの三男クロード(ココ)の彫像。ソフィーさんはリビングに飾って毎日眺め、ファミリーの絆を感じているという。 右・ピエール= オーギュスト・ルノワールは、お針子だったアリーヌ・シャリゴと結婚。長男のピエール、次男のジャン、三男のクロード(愛称ココ)の3人の息子に恵まれる。ルノワールは家族を大切にし、妻や子どもたちの肖像画を多数描いている。子どもたちは長じて俳優や映画監督として活躍。ピエールの息子、クロードは映画の撮影監督になり、叔父のジャン・ルノワールの映画撮影にも携わっている。ソフィーはクロードの娘。異母兄で写真家のジャックがいる。画商のアンブロワーズ・ヴォラールが作成した貴重なオリジナル・カタログの一冊。その中にあるルノワールの長男ピエールの肖像画を指さすソフィーさん。ピエールはソフィーさんの祖父にあたる。ページをめくると数々の名作が収載されていて、インスピレーションの源になることもあるという。カタログケースの装丁も美しい。