「ヴェルディ」の魅力 第6回(全8回) イタリアの作曲家、ジュゼッペ・ヴェルディ。アニバーサリーイヤーを祝し、不世出の奇才の深い魅力に迫ります。
前回の記事はこちら>> 生誕記念イヤーに代表作の上演が目白押し
4年前の来日公演が大評判となったローマ歌劇場。ソフィア・コッポラ演出の名舞台『椿姫』が、日本で再演されます。ひと足先に、芸術監督にお話を聞きました。
写真/ 2018年の日本公演より(©Kiyonori Hasegawa)「イタリア人にとってヴェルディは“父”でもあるのです」(アレッシオさん)
ローマ歌劇場芸術監督 アレッシオ・ヴラッド氏1955年ローマ生まれ。サンタ・チェチリア音楽院でピアノ、作曲、指揮を学ぶ。2010年からローマ歌劇場の芸術監督を務める。「ヴェルディはイタリアを代表する作曲家ですが、作曲者の意図に忠実に従いながらも現代の観客に受け入れられる上演を実現させることを第一に考えなければなりません。演出のコンセプトについての吟味や、役柄に適した声を求めて歌手を選ぶ必要もあります。
1800年代から1900年代になって映画が誕生するまでオペラは大衆的な劇場芸術でした。観客は舞台で起こっていることを現実に重ねて見て夢中になっていたわけです。今の世の中では考えられませんが、その時代の作品を今日の観客が満足する上演にするのは難しく、責任重大という気持ちです。
音楽評論家のマッシモ・ミーラが“ヴェルディは父親を象徴している”といっていますが、髭を蓄えた顔やじっと見つめるような眼差しは安心感を与えるとともに威厳を感じさせる父親のイメージがあります。実際彼のオペラ作品のほとんどに父親が登場しています。『椿姫』『リゴレット』『シモン・ボッカネグラ』など題名を挙げたらきりがありませんが、これらの作品には常に父の姿があり、父との関係が描かれています。イタリア人にとってヴェルディはイタリアを代表するとともに父親の代表でもあるといえるでしょう。
2023年には日本公演を予定しています。『椿姫』は劇的にも音楽的にも完璧で、愛と死、人間関係を描く感動的な作品です。イタリアを代表する「ヴァレンティノ」の衣装、ソフィア・コッポラの演出はわかりやすくドラマを進行させていきます。きっと皆さんに楽しんでいただけると思います」(談)
写真/ 2018年の日本公演より(©Kiyonori Hasegawa)ローマ歌劇場『椿姫』日程:2023年9月10日、13日、16日、18日
会場:東京・横浜
※詳細は2023年1月下旬に、NBSホームページ(
https://www.nbs.or.jp/)にて発表予定。
音楽監督:ミケーレ・マリオッティ 演出:ソフィア・コッポラ 指揮:ミケーレ・マリオッティ 出演:ヴィオレッタ/リセット・オロペサ、アルフレード/フランチェスコ・メーリ、ジェルモン/アマルトゥブシン・エンクバード ほか
Information
ヴェルディ作品公演情報
- 新国立劇場『ファルスタッフ』 2023年2月10日、12日、15日、18日 写真/新国立劇場「ファルスタッフ」2018年公演より(撮影/寺司正彦) シェイクスピアの『ウィンザーの陽気な女房たち』『ヘンリー四世』をもとに、ヴェルディが人生最後に手がけた喜劇。老騎士を中心に描かれる人間模様。 全3幕〈イタリア語上演/日本語および英語字幕付き〉 S席2万4200円~D席4400円 会場:オペラパレス ●新国立劇場 https://www.nntt.jac.go.jp/opera/
新国立劇場『アイーダ』 2023年4月5日、8日、11日、13日、16日、19日、21日 写真/新国立劇場「アイーダ」2018 年公演より(撮影/寺司正彦) ヴェルディ後期の大作で、ダイナミックな舞台転換が特徴。歌手、合唱、バレエ、助演が織り成す“凱旋の場”は音と視覚の大スペクタクルで見ごたえ十分。 全4幕〈イタリア語上演/日本語および英語字幕付き〉 S席2万9700円~D席5500円 会場:オペラパレス ●新国立劇場 https://www.nntt.jac.go.jp/opera/
新国立劇場『リゴレット』 2023年5月18日、21日、25日、28日、31日、6月3日 写真/「リゴレット」ビルバオ・オペラ公演より ヴェルディ中期の傑作を新制作で上演。「女心の歌」「慕わしき人の名は」などのアリアや、オペラ史上最も美しい四重唱「美しい恋の乙女よ」など、聴きどころ満載。 全3幕〈イタリア語上演/日本語および英語字幕付き〉 S席2万7500円~D席5500円 会場:オペラパレス ●新国立劇場 https://www.nntt.jac.go.jp/opera/
パレルモ・マッシモ劇場『椿姫』 2023年6月16日、18日 多数の人気オペラ歌手を輩出しているイタリア・シチリア島の都市、パレルモの名門歌劇場の来日公演。ヴィオレッタを演じるエルモネラ・ヤオに注目。 全3幕〈イタリア語上演/日本語字幕付き〉 S席3万4000円~ D席1万2000円 会場:東京文化会館 大ホール ●コンサート・ドアーズ www.concertdoors.com
取材・文/田口道子 編集協力/三宅 暁(編輯舎) 取材協力/日本ヴェルディ協会 市浦純子
『家庭画報』2023年1月号掲載。
この記事の情報は、掲載号の発売当時のものです。