デジタル化、グローバル化の時代へ「平成遺産」 最終回(全7回) アナログからデジタルへ、ハードからソフトへ──21世紀の幕開けと歩調を合わせるかのように、デジタル化の波がグローバルな潮流として押し寄せ、私たちの生活を根底から一変させていきました。スマートフォン、GAFA、インターネット、人工知能(AI)、IoT(モノのインターネット)......暮らしの隅々までデジタルが入り込み、決して手放せないものになりました。モノの豊かさを背景とする昭和30年代の変革を「生活革命」の時代と呼ぶならば、平成は情報技術の革新が続いた「デジタル革命」の時代。平成時代は、デジタルによる生活のソフトウェア化が、豊かさと結びついた時代でした。
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平成の世になってバブル経済が崩壊。その後、デジタル革命、震災などさまざまな出来事が起きました。新しく生み出された時代の象徴を挙げながら、約30年の平成という時代を振り返ります。
開放的な空間が広がる「金沢21世紀美術館」。左のアートは、美術館設計者の妹島和世+西沢立衛/SANAAによる建築作品“球体のパビリオン「まる」”。美術館の開館10周年を記念し設置され、人気を博している。撮影/渡邉 修 提供/金沢21世紀美術館【アートスポット】
誰もが現代アートの虜に
選/文・笹岡隆甫 (華道「未生流笹岡」家元)現代アートが身近に感じられるようになったのは、平成という時代が残した遺産の1つだ。ルイ・ヴィトン等とのコラボにより、草間彌生氏、村上 隆氏といった世界的なアーティストの名前がアートに関心がない層にも浸透した。国際芸術祭やアートフェアが国内各地で開催され、まちづくりにアートは欠かせないものとなった。
何より、難解な現代アートが親しみやすいものになったのは、続々とオープンしたアートスポットのおかげだろう。代表格である「ベネッセアートサイト直島」は、進化し続ける現代アートの殿堂として今も世界中から注目されているし、「金沢21世紀美術館」「十和田市現代美術館」は、ガラス張りでアートをまちに開放した。
「江之浦測候所」「洸庭」のように、アーティスト自身が設計を手がけた建築も話題となった。建築とアートが一体となった場の力は圧倒的で、その空間に身を置けば、誰しも現代アート好きになってしまう。私が現代アートとのコラボを好むのは、これらのアートスポットの影響かもしれない。
いけばなも、当初、建築と花が一体となって作り出す場の妙味を楽しむ最新のアートだった。新しいモノの見方を提供する最先端のアートも、やがては古典となる。しかし、その時代に確かに世界を変えた、その魅力は決して色褪せない。
笹岡隆甫さんが選ぶ
平成アートスポット6選
●ベネッセアートサイト直島香川県香川郡直島町
TEL:087(892)3223(ベネッセハウス)
URL:
https://benesse-artsite.jp/瀬戸内海で地域に根ざしたアート活動をする先駆け。
●金沢21世紀美術館石川県金沢市広坂1-2-1
TEL:076(220)2800
URL:
https://www.kanazawa21.jp/平成16年開館。美術館と街の一体化を目指した、ガラス張りの建築構造が特徴。
●小田原文化財団 江之浦測候所神奈川県小田原市江之浦362-1
TEL:0465(42)9170
URL:
https://www.odawara-af.com/ja/enoura/杉本博司のアートの集大成として名高い。平成29年オープン。
●青森県立美術館青森県青森市安田字近野185
TEL:017(783)3000
URL:
http://www.aomori-museum.jp/ja/平成18年開館。青森県の芸術風土を世界に発信。県出身作家の作品も充実。
●十和田市現代美術館青森県十和田市西二番町10-9
TEL:017(620)1127
URL:
http://towadaartcenter.com/平成20年開館。「Arts Towada」をコンセプトに、街の景観の中核を成す。
●洸庭広島県福山市沼隈町大字上山南91
TEL:084(988)1111
URL:
https://szmg.jp/explore/kohtei/神勝寺 禅と庭のミュージアム内に建つアートパビリオン。平成28年設立。
〔特集〕デジタル化、グローバル化の時代へ「平成遺産」(全7回)
「#平成遺産」の記事一覧 本誌が考える【平成遺産】とは、平成時代に生み出されたもの、もしくは平成時代に広く一般に親しまれたもので、次世代へ継承したいモノ、コト、場所を指します。
『家庭画報』2020年8月号掲載。
この記事の情報は、掲載号の発売当時のものです。