精神科医の禅僧が贈る「幸せ力を高めるマインドフルネス」第4回(前編) 些細なことに腹が立つ、つい声を荒らげてしまう―。最近、「心がとげとげしい」と感じることはないでしょうか。経験したことのない閉塞感の中、誰もがストレスを抱えながら上手に発散できずにいます。こんなときにこそマインドフルネス。世の中の状況は同じでも、あなたの受け止め方と反応が変わります。
前回の記事はこちら>> 周囲の出来事に“しなやかに”反応する
怒りやイライラに翻弄(ほんろう)されない心持ちを
こんなあなたへ●毎日、何かしらに対してイライラしている。
●思わず怒りをぶつけてしまい、後悔することが多い。
●ネガティブな感情は表現せず、自分の中で抑え込む。
〔お話ししてくれたのはこの方〕
川野泰周(かわの・たいしゅう)さん臨済宗建長寺派林香寺住職、精神科・心療内科医、RESM新横浜睡眠・呼吸メディカルケアクリニック副院長
ネガティブな感情を抑え続け、私たちの脳は疲れている
写真/アフロ私たちは場所を移すことでモード(心の状態)を切り替え、人に話すことでカタルシス(心の浄化)を得ています。どちらもままならない今、多くの人が怒りやイライラなどネガティブな感情を抱きやすく、解消しづらい状況にあり、“心の危うさ”を抱えているといえます。
これに対する反応として、他者に攻撃的になる人もいれば、感情をあらわにせず自分の中に抑え込む人もいます。「理性的にふるまうのが立派な大人」との風潮があり同調圧力の強い日本では、後者のほうが多数派かもしれません。
そんな状態に気づかずにいると、ある日突然心が折れ、うつになり、体が動かなくなるなど、「バーンアウト」(燃え尽き症候群)を起こしてしまう恐れがあるのです。
このとき、脳はどのように働いているのでしょうか。感情や気分など本能を司るのが脳の深部にある「大脳辺縁系」。知性や理性、思考力や発想力など高次機能を担当するのが表層の「大脳新皮質」です。
情報過多の世の中で、同時にいくつものタスクを処理しなければならない現代人は、日常的に大脳新皮質を酷使しています。その上にストレスがかかって大脳辺縁系の一つである扁桃体(へんとうたい)が反応し負の感情が生じると、これを理性で抑えようと大脳新皮質はさらに頑張ります。その結果、脳は疲弊し、ついに怒りを抑えきれずに爆発したり、心身の症状として表れる危険があるのです。