精神科医の禅僧が贈る「幸せ力を高めるマインドフルネス」第6回(前編) 行楽の季節になりました。人込みはできるだけ避けたい今、山や高原、海や川など自然の中で非日常の世界にゆったり浸り、心と体を回復させる“リトリート”が人気です。必ずしも遠出の必要はありません。近くの公園や家の中でもマインドフルに自然を楽しむ工夫をお伝えします。
前回の記事はこちら>> 居場所を替えれば、気持ちも切り替わる
非日常で行う“リトリート”。人は自然の中で回復していく
こんなあなたへ●満員電車、人込みなど都会の生活に疲れている。
●しばらく自然の中で過ごしていない。
●マンション暮らしで、部屋の中は人工物ばかりだ。
〔お話ししてくれたのはこの方〕
川野泰周(かわの・たいしゅう)さん臨済宗建長寺派林香寺住職、精神科・心療内科医、RESM新横浜睡眠・呼吸メディカルケアクリニック副院長自然の持つリラックス効果が実験結果でも明らかに
写真/アフロ私たちは、満員電車や繁華街の人込みでは疲労を感じ、山や高原、広い公園など自然の中では心も体も癒やされることを経験から知っています。自然を構成するものは人工物のように注意資源(人が使える注意力の総量)を浪費させず、脳を疲れさせないのでしょう。
自然が心に及ぼす影響は研究対象にもなっています。米国で都会生活が脳機能に与える影響を調べたところ(2011年)、住む町の規模が大きいほど脳の扁桃体(へんとうたい)の活動が活発である、つまりネガティブな感情が起こりやすいことがわかりました。
また森林環境による心理面への影響に関する実験(2003年「林野庁」)では、森林の中にいるだけでコルチゾール(ストレスホルモン)が減少し、さらに運動を行うと免疫を担うNK細胞が活性化しました。
運動前後で気分の状態を比較したところ「不安、落ち込み、敵意、疲労、混乱」の5項目のネガティブな感情が低下したのです。