「私、だいぶ頑張っているな」「少し無理をしているかも」と感じたとき、自らを癒やす瞑想法をご紹介します。シンプルな言葉や動作がストレートに心に響きます、やがて自分自身を愛おしく感じられることでしょう。
頑張った! 瞑想
ストレスを観察し最後に自分をねぎらう私(川野)が考案した、いつでも簡単にできるオリジナルの瞑想法です。明らかなストレスや悩みごとがあるときはもちろん、その日の出来事を振り返って「大変だったな、疲れたな」と感じるときにもおすすめです。結果はどうあれ「頑張った」という事実を認めてあげることで、自慈心が育まれます。
まず、「思考・感情・身体の感覚」の3つで自分の心を観察する3段階分析法でストレスを観察します。
(1)思考の観察。自分の中のストレスを文章化する。「友人からいわれた否定的な言葉が頭から離れない」など。
(2)感情の観察。その時の感情をひと言で表現する。「悲しかった」など。
(3)身体の感覚の観察。頭のてっぺんから足の先までをスキャンするように注意を向ける。「頭がギュッとしめつけられる」「胸が苦しい」など。
ここまで来たら最後が肝心です。大きく息を吸い込んで、それらの感情や感覚をすべて吐き出すイメージでゆっくり息を吐き出しながら、「頑張った! 頑張った!」と心の中で唱えるのです。小さく声に出してもよいでしょう。
ネガティブな出来事を3つの角度から観察することによって、ストレスと距離を置き客観的に向き合うことができます。そのうえで「頑張った」という自分自身の努力や健闘をねぎらうことで自己受容がうながされるのです。
「やってみたら涙が出てきた」というかたもおられます。どんな反応も否定せずありのままを受け入れましょう。
川野さんの「頑張った! 瞑想」の解説を聞くことができます。
自分を手当てする瞑想
手と胸の双方でぬくもりを感じる前出のネフ博士とガーマー博士が共同開発したMSCのトレーニングプログラムにも取り入れられている方法の応用です。
目を閉じて座り、呼吸に意識を向けて呼吸瞑想を行います。まず胸に手を当て、胸で手のぬくもりを感じましょう。次に手に意識を向けて手の感覚を観察します。胸の温かさを感じ、あるいは心臓の鼓動や肺が膨らんだりしぼんだりする様子を感じるかもしれません。最後に手を離し、呼吸瞑想を行って終わります。
胸が手を温め、手が胸を温める相互作用を感じることがこの瞑想のポイント。それによって自分は癒やす側であり同時に癒やされる側でもあると認識できるのです。「手当て」という言葉があるように手の持つエネルギーは高く、短時間で終わる瞑想ですが、多くのかたが効果を実感しています。
触る場所は胸に限らず、おなかでも腕でも足でもかまいません。服の上からよりも肌に直接触れるほうがぬくもりを感じやすいかもしれません。入浴時にシャワーを浴びながら行ってもよいでしょう。
“25分作業に集中して5分休む”
「ポモドーロ・テクニック」は自慈心も高める「ポモドーロ・テクニック」はイタリア人のフランチェスコ・シリロ氏が考案した時間管理術で、“25分作業に集中したら5分休む”を繰り返す方法です。脳疲労が蓄積せず、仕事の効率が上がるだけでなく、疲れにくい生き方の選択は自慈心を育むことにもつながります。ポモドーロとはイタリア語でトマト。トマト形のキッチンタイマーを用いたことが名前の由来です。
参考サイト
https://francescocirillo.com/pages/pomodoro-technique
〔お話ししてくれたのはこの方〕川野泰周(かわの・たいしゅう)さん
臨済宗建長寺派林香寺住職、精神科・心療内科医、RESM新横浜睡眠・呼吸メディカルケアクリニック副院長。1980年生まれ。慶應義塾大学医学部医学科卒業。精神科医療に従事した後、3年半の禅修行を経て2014年より実家の横浜・林香寺の住職となり、寺務と精神科診療、マインドフルネスの普及に力を注ぐ。近著に『精神科医がすすめる 疲れにくい生き方』(クロスメディア・パブリッシング)。公式ウェブサイト https://thkawano.website/
「寺子屋ブッダ」https://www.tera-buddha.net/